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安藤直樹─私が初めて彼と出会ったのは、あの秋の学園祭だった。
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テラスは、普段校舎内で見かけることのない人々でごった返していた。
近所の子供達、カジュアルな格好をした私と同年代ぐらいの子達、中年の主婦やおじさん達。
私は一人で持ち場に座りながら、ぼおっとその光景を見つめていた。
友達はみんな、2年B組でやってるビデオの上映会に行ってしまった。
去年劇場公開された作品だ。
近くのシネコンで上映している作晶はすべて観ることを目標としている映画好きの私は、その作品も当然観ていた。レディースデイの日に観ておいて良かった、というのが正直な感想だった。
これが通常料金だったら、正直、怒り狂っていたかもしれない。
要するに、つまらなかったのだ。
まああんな映画でも、暇つぶしにはなる。
高校三年の学園祭。素直に楽しんでいる人もいれば、受験でそれどころじゃないって態度をあからさまにしている人もいる。
私と言えば、推薦で某大学に合格したので、まあ取りあえず楽しんでいるって感じだった。
部活にも夢中にならず、燃えるような初恋もせず、無気力に日々を送っている私だけど、最後の学園祭ぐらい楽しんだって罰は当たらないだろう。
私達のクラスは、フランクフルトソーセージを売ることになった。
学園祭当日に忙しいのは、屋外のテラスで売る係と、調理室でフランクフルトを焼く係だけ。
材料を仕入れる係の私は、暇を持て余していた。
だけど、学園祭前は私の家を休日の打ち合わせ場所に提供したんだから、たとえ当日は暇でも、十分学園祭に貢献しているはずだ。
でも、せっせと仕事に励む同級生を見捨てるほど、私は薄情ではなかった。
学級委員のやかん君が、こんがり焼けたソーセージが山盛りに積まれたトレイを抱えて、運んできた。
校門が近いこの場所の方が人が集まるから、校舎内で売るより商売がやりやすい。
けれども、私達のクラスに割り当てられたこの場所には、ガスを引いて来るのが難しかった。
だから、調理室でソーセージを焼いて、それを下に運ぶという手間がかかってしまう。
やかん君は、トレイをぶっきらぽうに私に手渡して、すぐに調理室に帰ろうとする素振りを見せる。
「ちょっと、待ってよ」
と私は彼を呼び止めた。
「え?なんだよ」
「お客さん来ないし、一人で退屈だから、ちょっとお話でもしようよ」
「なんだそれ。俺を誘ってるのか?」
「違うわよ」
「みんなは?」
「映画観に行っちゃった」
「お前は、みんなに嫌われてるのかもな」
薄ら笑いを浮かべながら、やかん君はそんなことを言った。
失礼しちゃう。
「やかん君は私のことを嫌いな訳じゃないんでしょう?.」
その私の問いかけにも、彼はへらへらと薄ら笑いを浮かべるばかりで、まともに答えようとはしない。
「ねえ、やかん君」
「おっとお客さん来ましたよ、じゃあねー」
やかん君は、逃げるように私の元から去って行っ
てしまった。
「薄情者おー、人でなしいー」
本文(P.9、10より引用)
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