結婚失格枡野　浩一　著ＢＯＯＫＳルーエのＮＥＴ通販

枡野浩一先生　サイン会　ご案内
講談社から新刊「結婚失格」発売になります。
ＣＨＩＮＴＡＩ　「いい部屋みつかっ短歌」とタイアップして、店頭キャンペーンを開催いたしました。

日時：2006年11月3日（金）　ＰＭ　３：００より　　サイン会のご報告⇒
場所：弊社ＢＯＯＫＳルーエ店頭
備考：「結婚失格」発売記念サイン会　
枡野浩一先生　オフィシャル　

　結婚失格

著者	枡野　浩一　著
出版社	講談社
定価	税込価格　1,365円
第一刷発行	2006/10
	ISBN　4-06-213706-2 　★　会員登録はこちら（1500円以上で宅配送料無料）⇒

わけもなく家出したくてたまらない一人暮らしの部屋にいるのに

その昔　あなたのことが　大好きで
そして今では　嫌いになった

あまりにも率直に、リアルタイムで綴られた初の自伝的連載小説「結婚失格」……待望の単行本化。

驚愕の同時進行形小説「結婚失格」。短歌連作「愛について」、歌人・穂村弘と作家・長嶋有のエッセイも特別収録！

オススメな本　内容抜粋

ＪＲ東日本の「スイ力」は、つかう前にイメージしていたよりは便利なカードだと
速水は思う。カードを財布にいれたままスイスイと改札口を通過できる。磁気が強力
だからなのか、それは人体には無害なのか、という考えが時々頭をよぎるけれど改札
口を通過してしまえば忘れてしまう。定期券を財布から取り出すことさえ面倒がるよ
うな人間は死んでしまうがよい、と言ったのは秀逸な音楽評論『歌姫２００１』（太田
出版）を書いた松本亀吉だ。その卓見に拍手を送ったのに結局、速水はスイカを愛用
してしまっている。
きょうの試写会会場は日比谷で十五時半スタート。中央線で東京駅へ向かい、そこ
からタクシーに乗ることにした。吉祥寺から東京までの数十分間、かつてはシルバー
シートと呼ぼれていたが、今は優先席と呼ぼれているシートにすわる。三十四歳なの
に二十代にもまちがわれる自分が、老人でも病人でも妊婦でも子供連れでもないのに
「優先席」にすわっていることを、うしろめたく感じる必要がないくらい電車はすい
ている。松本亀吉ならどんなときも優先席には座らないだろうか。
坂崎千春のエッセイ集『片想いさん』（ＷＡＶＥ出版）を広げた。「恋と本とごはん
のＡＢＣ」という欲張りなサブタイトルがついている。基本的には恋愛エッセイだが、
お気にいりの本が表紙写真つきで紹介されているページや、簡単な料理のレシピがイ
ラストで説明されているページもある。著者は一九六七年生まれの絵本作家・イラス
トレーター。速水のひとつ年上だが、学年でいえぼ同年という可能性もある。スイカ
の宣伝ポスターにつかわれている無表情なペンギンは、この人の作品であるとプロフ
ィールに書いてあるのを読み、興味をひかれて買った本だった。ペンギンを表現する
のに必要な色は白と黒の二色で、白い紙に印刷すればインクは最低一色で済むからコ
スト面で得なのかもしれない。新潮文庫がパンダをイメージキャラクターにしている
のも同じ経済的な理由なのではないかと速水は思っている。
この人のイラストの雰囲気はかなり感じがいい。けれども紹介されている本の趣味
は必ずしも自分とは合わない。吉本ぼななのデビュー短編集、池澤夏樹の芥川賞受賞
作、谷川俊太郎と佐野洋子の詩画集など、速水が読んだことのある本も混じっている
けれど、自分ならもっとちがう感想を書くだろうと思いながら読み進んだ。たとえば
谷川俊太郎と佐野洋子が愛し合って結婚し、のちに離婚してしまったことに一言も触
れないのは何か重要なことから目をそらしているような気がする。
片想い、という表記を好む人からはなるべく遠ざかるようにしてきた。片思いで充
分なのに「想い」と書くのは過剰にセンチメンタルだ。けれど『片想いさん』のセンチ
メンタルは、不快ではなかった。さんが付いていることによって、センチメンタルで
ある自分を客観視している感じがして、ゆるせるのか。
もう少しで東京駅、というときにエッセイは急展開を見せる。「わたしは両思いに
なったことがない」「男の人と寝たことがない」と著者が衝撃の告白をしたのだ。速水
は本を閉じてリュックに仕舞った。三十を過ぎて処女という人はきっとざらにいる。

（本文Ｐ. 15～17より引用）

▼この本の感想はこちらへどうぞ。　＜ＢＬＡＮＫでご覧になれます＞

　★　会員登録はこちら（1500円以上で宅配送料無料）⇒

このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製（創）作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。