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 綿いっぱいの愛を!
著者
大槻ケンヂ/著
出版社
ぴあ
定価
税込価格 1365円
第一刷発行
2005/04
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ISBN 4-8356-1530-1
 
ネコ見たりイヌ見たり!ネコネコネコネコイヌイヌイヌイヌどっちを選べどオーケンだもの!「神菜、頭をよくしてあげよう」以来のともかく爆笑のほほんエッセイ集。
 

本の要約

人間万事塞翁がコラムネタ;南セントレア市はできなかった;鴨川痴漢旅…ってオイ!!;手塚治虫よ、ちっぽけなプライドを返せっ!;スペル星人はどこへ消えたのだろうかと;ドラえもんとLSDの関係;追悼らもさんキープ・オン・ロッキン!;中島らも追悼ライブ・その裏側を暴く!;オムライザー!え?藤岡弘!?;ジーン・シモンズに会って来た〔ほか〕



オススメな本 内容抜粋

人間万事塞翁がコラムネタ

人間万事塞翁が馬などと言う。
果たして我が30数年間の道のりはどうだったろうか。
油の乗り切った熟年の僕が40歳手前の心境を一言で表すならこれはもう、いや〜んマイっちんぐう、と言ったところだ。
バカみたいなれど本音だ。
まったくもっていや〜んマイっちんぐと言った気持ちなのだ。
だって心は未だ18歳ぐらいで止まったままだから。
典型的なアダルト・チルドレン…つーかコドモ大人なものだから、40手前って言われてもどうしたらいいのかまいっちまいますよ。
とは言え30数年も生きていればさすがにいろいろあった。
八歳の頃には交通事故にあった。
やっと乗れるようになった自転車で激走していたところ車にはねられた。
自転車の前輪がグニャグニャに曲がるほどの衝撃。
奇跡的に無傷ですんだ。
問題はその後だ。
しばらく自宅静養していると加害者が謝りに来た。
子供だった僕は来客がうれしく、彼の前で「ホラ元気だよ!」と言いながら飛びはねてみせた。
そうしたら後で母親にベチ〜ン!とひっぱたかれたんだよな〜。
「賢二!バカ!!出てくんなお前は!」
慰謝料ふんだくれなくなるからという論旨の一発であったと後に気付く。
母ちゃんそりゃね〜ぜ。
ヒデ〜話しもあったもんだ。
だが、僕はビ〜ビ〜怒りながらもその時こう思ったのだ。
「しかし、これは、いつかネタになるぞ」
もちろん31年後のエッセイ用とは思いもよらなかったけれど、「きっとこういう理不尽で悲惨な体験は、時が過ぎればきっと、笑い話しになるんだろうな」なんかそう、直感したことを今でもまざまざと覚えている。
現に今こうしてネタにしてるし。
実際、いっそネタと考えれば大方の災難はやり過ごせるものだ。
受験失敗、学校中退、プチひきこもり等々。
青春時代も沢山のトホホ状態を経験してきた。
その度に、「しかしこれは、いつかネタになるぞ」そう思ったら、一瞬にして事態は客観性を帯び、フカンからその全体像を観察出来るようになった。
すると必ず何らかの逃げ道を発見することが出来た。
どんな逆境にも、意外に、まるで面白コラムのネタのように、笑える側面があるのだという救いにハタと気が付くからだ。
20代後半にノイローゼを患った。
これは我が半生最大のピンチであった。
タイの島でマジック・マッシュルームを食べたところ強力なバッドトリップにおちいり、PTSDというやつなのだろう、帰国後にパニック障害を起こし、闇のような鬱状態の中で何年も苦しむこととなった。
その時は、お経のごとく自分に何度も言い聞かせたものだ。
「しかし、これだって、いつかネタになるはずだ」
そうでもしなけりゃこの苦しみの元が取れねーよ!という、言ってみれば逆切れであった。
精神の病にもがいている自分自身を面自ネタとして観察してみることにしたのだ。
すると例えば「沼の底の魚を想像したら怖くなった」という理由から糸井重里さんの釣りの誘いを断る大槻ケンヂなんてのがそこにいた。
自律神経がいかれていたために何もかもが恐ろしく思えてならなかったのだ。
当人にすればいかんともしがたい恐怖症なのだが、ハタから見たらそれただのヘンなやつである。
糸井さんも「??」と思ったことであろう。
そう考えれば、こいつは面白コラムのネタにうってつけの人物ではないか。
「大体お前、魚が怖いって、今朝も塩鮭食べてんじゃん」
と日記でつっ込みを入れてもみたり。
そうやって苦しむ自分をネタにして面白がっていくうちに、病める自分と面白がる自分とが少しづつ重なっていった。
やがていつの間にか平静の自分を取り戻すまでに回復できた。
ノイローゼに較べればなんでもないが、まあ生活していると今もやっかいなことって確かにあるもんだ。
ネーちゃんに逃げられることもある。
地方のライブが不入りの時もある。
でも、なんでも、いつかは面白コラムのネタとして笑い飛ばせればそれでいいのだと僕は思う。

 

 

(本文P. 8〜11より引用)



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