BOOKSルーエのおすすめ本 画像
 天使と悪魔 上
著者
ダン・ブラウン/著 越前敏弥/訳
出版社
角川書店
定価
税込価格 1890円
第一刷発行
2004/10
天使と悪魔 上 ダン・ブラウン/著 越前敏弥/訳 e-honからご注文 画像
ISBN 4-04-791456-8
 
図像学者ラングドンの元に世界最大の科学研究所セルンから紋章についての問い合わせが入る。それは伝説の秘密結社の紋章だった…。
 
天使と悪魔 上 ダン・ブラウン/著 越前敏弥/訳

本の要約

ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。紋章は秘密結社“イルミナティ”―十七世紀にガリレオが創設した科学者たちの結社―のもので、この世にはもう存在しないはずの伝説の紋章だった。それが男の全裸死体の胸に焼印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに世界初の大量反物質の生成に成功した科学者。反物質は核の数十倍のエネルギーをもつが、すでに殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持込まれたという…。スピード感あふれ、ひねりと衝撃が連続の、タイムリミット・サスペンス。



オススメな本 内容抜粋

事実


世界最大の科学研究機関である、スイスのセルン(欧州原子核研究機構)が、反物質粒子の生成に先、ころはじめて成功した。
反物質は、通常とは逆の電荷を帯びた粒子からなるという点を除けば、正物質となんら変わらない。
反物質は人類にとっての最強のエネルギー源とされている。
そのエネルギー効率は百パーセントである(核分裂のエネルギー効率は一・五パーセントにすぎない)。公害も放射線も生み出さず、ほんの微量でニューヨiク市全体にまる一日ぶんの動力を供給できる。
しかし、ひとつ落とし穴がある。
それは、非常に不安定な物質だという点である。どんな物質とでもー空気とでさえ、接触すれば発火する。
反物質一グラムが有するエネルギーは、二十キロトンの核爆弾に相当する。
これはヒロシマに投下されたものとほぼ等しい。
最近まで、反物質はほんの少量(一度に原子数個)しか生成できなかった。
だがセルンは、新型の反陽子減速器の開発に着手した。この高度な製造施設が完成すれば、はるかに多量の反物質の生成が可能になる。
ここで、ある疑問が浮かびあがる。
このきわめて不安定な物質は、世界を救うのだろうか。
それとも、歴史上最も凶悪な兵器を生み出すために利用されるのだろうか。

プロローグ

物理学者レオナルド・ヴェトラは、肉の焼けるにおいに気づいた。
それが自分の体から発せられているのも知っていた。
のしかかる黒い影を、ヴェトラは恐怖のまなざしで見あげた。
「何が望みだ」
「ラ・キアーヴェ」かすれた声が答えた。「パスワードを」
「しかし……それは」
侵入者はまたのしかかり、白く熱い物体をさらに強くヴェトラの胸に押しつけた。肉の焦げる音がした。
ヴェトラは苦悶の叫びを漏らした。
「パスワードなどない!」意識が遠のくのがわかる。
相手の目が光った。「ネ・アヴェーヴォ…パウラ。それは残念だ」
ヴェトラは懸命に意識を保とうとしたが、ますます闇が迫った。襲撃者がここに来た目的を果たすことはあるまいという確信だけが、せめてもの慰めだった。一瞬ののち、相手はナイフを取り出し、ヴェトラの顔へ近づけた。ナイフが宙を舞った。慎重に。正確に。
「神よ、お助けください!」ヴェトラは叫んだ。だが、遅きに失した。

ギザの大ピラミッドのはるか頂上から、若い女が笑いながら呼びかける。
「ロバート、さっさとして!まったく、もっと若い男と結婚すればよかったわ」その笑みは魔術だ。追いつこうとするが、両脚が石のようだ。「待ってくれ。頼む……」
のぼるうちに、視界がかすみはじめる。
雷鳴が耳に響く。早く追いつかなくては。ところが、目をあげると、女の姿がない。そこには、歯の落ちかけた老人が立っている。
老人はこちらを見おろして、わびしげに口をゆがめる。
やがて苦しげに叫び、その声が砂漢に響きわたる。
ロバート・ラングドンは悪夢からはっと目を覚ました。
べッド脇の電話が鳴っている。
ぼんやりしたまま、受話器をとった。
「もしもし」
「ミスター・ロバート・ラングドンとお話ししたい」男の声だ。
ラングドンはひとりきりのベッドに起きあがり、頭をはっきりさせようとつとめた。
「わたしが…−ロバート・ラングドンですが」デジ夕ル時計に目を走らせる。
午前五時十八分。
「いますぐお会いしなくてはなりません」
「どなたですか」
「マクシミリアン・コーラi。離散粒子の研究にたずさわる物理学者です」
「離散─なんです?」なかなか頭がまわらない。
「相手をおまちがえではありませんか」
「ハーヴァード大学で宗教図像解釈学の教授をしておられますね。象徴学に関する著作が三冊あって─」
「いま何時かご存じですか」
「申しわけない。お見せしなくてはならないものがありまして。電話では話せないのです」
ラングドンは悟りきったため息を漏らした。こうした経験は以前にもある。宗教図像解釈に関する本を執筆する弊害のひとつは、狂信家たちから電話がかかってきて、最近見た神のしるしが本物かどうか教えろとせがまれることだ。先月も、生涯最高のセックスを保証するから自分のシーツに魔法のごとく現れた十字を見にきてくれと、オクラホマのストリッパーに頼まれたばかりだった。ラングドンはそれを“タルサの聖骸布”と呼ぶことにした。
「どうやって電話番号を調べたんですか」こんな時間ではあるが、つとめて礼儀正しく尋ねた
「ワールドワイド・ウェブです。お書きになった著書のサイトを見ました」
ラングドンは眉をひそめた。あのサイトには電話番号など記されていない。この男は明らかに嘘をついている。
「なんとしてもお会いしたい」相手は執拗だった。
「謝礼はじゅうぶんにいたします」
だんだん腹が立ってきた。
「お気の毒ですが、わたしはー」
「いますぐ発てば、こちらには遅くともー」
「どこへも行くつもりはない。朝の五時ですよ!」ラングドンは電話を切って、ベッドに倒れこんだ。
無駄なことだった。
先刻の夢が脳裏に焼きついている。

 

 

 

(本文P. 1、11〜13より引用)


e-honからご注文 画像
BOOKSルーエ TOPへリンク


このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.