BOOKSルーエのおすすめ本 画像
 ウォルター少年と、夏の休日
著者
ティム・マッキャンリーズ/脚本 酒井紀子/〔ノベライズ〕編訳
出版社
竹書房 / 竹書房文庫
定価
税込価格  620円
第一刷発行
2004/07
e-honからご注文 画像
ISBN 4-8124-1717-1
 
あの夏の出会いが、僕に教えてくれた ”愛” と”勇気”の大切さを ─ 今年最高の涙の感動作!
 

本の要約

14歳のウォルターは、夏休みの問、二人の大伯父が住むテキサスの農場に預けられることになった。気の進まないウォルターに、母親のメイはすぐに迎えに来ると言い残し、姿を消してしまう。初めて会う大伯父、ハブとガース兄弟は、頑固で偏屈な変わり者だった。その晩、ウォルターは部屋の片隅で枚の古い写真を見つける。写っていたのは黒髪の神秘的な美女。ガースに聞くと、なんとさる異国の姫君だという。兄弟がアフリカを転々としていた若き日、ハブはこの姫と運命的な恋に落ちたというのだ。ガースの口から紡ぎ出される昔話は、ウォルターの空想の中で、奇想天外な冒険譚となって生まれ変わる。そして、お圧いの心の距離も、しだいに近づいていく……。繊細な少年と風変わりな老人たちのふれあいを描き、ヒットを記録した感動作。



オススメな本 内容抜粋

もしも、人一人の一生を小さな歯車に例えるなら、世の中はそんな歯車たちが複雑に絡み合って動く巨大なからくり箱のようなものだろう。
そこに偶然や奇跡はなく、あるのはただ必然と節理だけ。物事はいつでも有りのまま整然と在って、それ以上にも以下にもならない。
すべての出来事に、必ず理由があり結果がある。すごくシンプルで、明快な世界だ。
14歳のウォルター・コールドウェルは今までずっと、そんな世界にあこがれてきた。
嘘偽りも、説明のできない漠然とした不安もない世界に。
しかし1962年の夏、夏休みが始まり、母親のメイがおんぼろキャデラックの卜ランクにそそくさと旅行用カバンを積み込み始めた日。
彼は、どうしようもないほどの不安に襲われながら、助手席のドアの前で立ちすくんだ。
ウォルター自身は決して認めたくはないが、人はこういう感覚を”虫の知らせ”などと呼ぶのだろう。
年齢には似合わないほど疲れきった表情を浮かベて、彼は考える。
”本当に、この車に乗ってしまっていいんだろうか”
実は数週間前、母から旅行の計画を聞かされて以来、ずっと迷い続けてきた。
こうして出発の時が来てしまっても尚、不安は不吉な真っ黒い雲に姿を変え、頭の上をふわふわと漂っている。
下着や服、愛用のトラソプや大好きなコミック・ブック、小学生の頃に空き地で拾ったサビだらけのナイフ等を自分のスーッケースに詰めながら、何度ため息をついたことだろう。
メイは言った。
「あなたも新しい場所で、新しい友達を作って楽しみなさい。何か新しいことを始めるの。もうすぐ高校生なんだしね」
何につけても新しいことが好きな母は、しばらくセントルイスを離れテキサスヘ行くという考えにとりつかれてから、熱に浮かされたように上機嫌な毎日を送っていた。
「人生には、チャレンジが大切」
母が明るく言えば言うほど、ウォルターの漠然とした不安は、“また、とんでもないことが起こる”という確信めいた予感へと変わっていった。
メイの楽観的で大ざっぽな性格は、どうやら息子には遺伝しなかったようだ。
父親は、ウォルターが生まれる前に、死んでしまったと聞かされている。自分が母と性格が違うのは、その父親に似てしまったせいだろうか。彼は時々、鏡を見ながら、見たこともない父親の顔を想像したりする。
ウォルターは、新しいことを始めるのは苦手だった。慣れてしまったとはいえ、何度も引っ越しをしたり転校を繰り返したりするのは、もううんざりだ。どこに行っても、その場所が自分の場所ではないと感じることのむなしさ。彼は、生まれ育った土地に根付くように暮らして
いる友達を見るたびに心の底から羨ましく思った。
ウェイトレスとして働くメイは、ボーイフレンドを次から次へと変えていった。
「今度こそ、いい人を見つけたの」
母は毎回そう言ったが、長続ぎしたことがない。
彼女が選ぶ”白馬の王子様”は、決まってギャンブルに深入りしたり、実は酒癖が悪かったりでうまくいかなくなる。最初のうちは親切で誠実そうに見えるけれど、だんだんとウォルターを嫌い始める奴や、機嫌次第でメイに暴力を振るう奴さえいた。要するに、一人残らず絵に描いたようなロクデナシばかりだったのだ。
「早く乗りなさい、ウォルター。何してるの?」
母は既にハンドルを握り、じりじりしながらウォルターを待っている。

 

(本文P. 9〜11より引用)


e-honからご注文 画像
BOOKSルーエ TOPへリンク


このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.