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 海のふた
著者
よしもとばなな/著
出版社
ロッキング・オン
定価
税込価格 1575円
第一刷発行
2004/06
e-honからご注文 画像
ISBN 4-86052-037-8
 
今年も泳がせてくれてありがとう。今年もこの海があってくれて、ありがとう。
 
海のふた よしもとばなな/著

本の要約 海のふた よしもとばなな/著

短大を卒業し、ふるさとの西伊豆の町に帰ってかき氷屋を始めた主人公=まりちゃんと、ひと夏をこの町で過ごすことになった少女=はじめちゃん。自然も経済も生気を失ってしまったふるさとの西伊豆の町で、懸命に自立し、再生させようとする少女たちのささやかな闘いの物語・・・。第二の故郷と言える西伊豆・土肥へのよしもとばななの恩返し。版画家・名嘉睦稔との初のコラボレーションにして、初の新聞連載小説、ついに単行本化!



オススメな本 内容抜粋 海のふた よしもとばなな/著

あとがき

私は西伊豆の土肥という町に、もうかれこれ三十五年くらい、通い続けています。
もともと両親が夏に避暑のため連れて行ってくれていたところなので、幼い頃はそのよさがわからず「海へ行くんだ」とだけ思ってはしゃいでいました。
しかし親が年をとり私にも子供ができた今となっては、長く通い続けたこと自体がかけがえのない思い出となって、ずっしりと私の人生に根をはっています。
そしていかに私がその町を愛しているかに気づいたのも、最近のことです。
光のかげんも、緑の山も、のっぺりとした静かな海も、その中の生き物も、道で会う人々や猫も、全てが私にとってもうひとつのふるさとと呼べるものです。
時代の流れは、残念ながらよぎ変化だけをもたらさなかったようですが、それでも私はこれからもその愛する町に通い続けていくでしょう。
それから……小説の中ではじめちゃんのお父さんが無欲であるというエピソードがありますが、これは現実にとてもよく似たことがあったので、深く感じ入り描きこみました。その人はもう亡くなりましたが、相続した小さな小さな家で最後まで幸せに工芸にうちこんでいました。
私に無欲の大切さを教えてくれた田出實さんに感謝します。
そういう気持ちがこの小説の中には全部入っています。
この本は、スウォッチ・グループ・ジャパンの社長であるブルース・ベイリーさんが「よしもとさんと睦稔さんの本を創りたい」と言ってくださったときから、私たちの友情と共に長い時間をかけてやっと実現しました。
彼はこよなく自然を愛し、日本を愛しています。
私はその心意気に打たれ続けています。この本をそんなすてきなベイリーさんに捧げます。
そして、すばらしい自然や精霊の力を知り尽くした名嘉睦稔さんの絵は私のこの小さな小説に風格と意味を与えてくれました。
共に仕事がでぎたことを心から嬉しく思っています。
ありがとうございました。
原マスミさんは「海のふた」というすばらしいタイトルと彼の創った同名の曲の歌詞を、喜んで貸してくださいました。
ありがとうございました。この小説の全てのぺージに彼の歌が流れています。
ロッキング・オンの佐藤健さんはもう退職されたにもかかわらず、この本を出すために百パーセソトの力をつくしてくださいました。
ほんとうにありがとう!
そしてデザインの中島英樹さんは、どちらかというと古典的な内容のこの本に新しい時代の力をふきこんでくださいました。
ありがとうございます。
この本にかかわった全てのスタッフのみなさんと読者のみなさんに御礼申し上げます。
どうか若い人が希望を失わずに日本の自然を愛していけますように。
そして、私を育ててくれた両親と姉、土肥の海に、感謝をこめて。


よしもとばなな

 

 

(本文 あとがき  より引用)


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