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 スパイダーマン2
著者
アルヴィン・サージェント/脚本 ピーター・デイヴィッド/著 富永和子/訳
出版社
角川書店 / 角川文庫
定価
税込価格 620円
第一刷発行
2004/06
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ISBN 4-04-290403-3
スパイダーマン2  
運命さえも敵なのか。 スパイダーマンとして生きる。大いなる責任の前に、愛は敗れた・・・・はずだった。2004/07/10(土)より全国東宝洋画系にてロードショー
 
スパイダーマン2

本の要約 スパイダーマン2

思わぬ事故で、クモの力を手に入れた時、ピーター・パーカ─の平凡な人生は一変した。「大いなる力には、大いなる責任が伴う」自らの思い上がりで最愛の叔父を亡くした彼は、その死を償うべく、スパイダーマンとして生きる事を決意した。そして今、人々の希望となるべく奮闘する彼の前に、新たな試練が立ちはだかる。その名はドック・オク。四本の機械の腕を操るこの怪人に、スパイダーマンはいかに立ち向かうのか?



オススメな本 内容抜粋 スパイダーマン2

オットー・オクタヴィウスには、いくつか余分な腕が必要だった。
たった二本ではとうてい足りそうもない。
オクタヴィウスは浅黒い肌の、肉付きはよいが、そこそこに筋肉質の男だ。顔のまわりに垂れている髪は、彼が整髪などという些細な身だしなみにはあまり気を遣わないことを示している。
年は四〇代半ば、注意力は散漫だが、それでいてひとつのことに打ちこむタイプだという印象を与える。
簡単にいうなら、彼は常に、目の前の物とはまったく関係のない物事に気をとられる傾向があった。
彼は大学のキャンパスのはずれ、六番街とグリニッチ・アヴェニューの角でタクシーを降りるところだった。
片手に回転式のスライドトレイを持ち、折った肘に講義用資料が入ったフォルダーをはさんで、もう片方の手にはブリーフケースをさげていた。
そのため、ドアをあけることができず、バランスを崩さぬように気をつけながら足で蹴らなくてはならなかった。
ようやくタクシーを降りてひと息ついたとぎ、タクシーの運転手が苛々しながら、オクタヴィウスが二〇ドルだと思って渡した紙幣は一〇ドルだと告げた。そうなると、また財布を取りださねばならない。
彼は低い声でぶつぶついいながら、何をどこヘ置けるか考えようとした。
すると聞いたことのある声が彼を後ろから呼び止めた。「オットー!」
白い上衣を着たブ・ンドの髪の男が駆けよってくる。「オットー、南東の角で落ち合うことになっていただろう!こっちは南西だぞ!」
「そうかP」オクタヴィウスはうわの空で答えた。「それは悪かったな、カーティス、わたしは航海士ではないんでね。手を貸してもらえると助かるんだが」
「ひとつで足りるなら、喜んで貸すとも」
オクタヴィウスは顔をしかめ、片腕がないことを強調するかのように、右肩でひらついている白衣の袖をちらっと見た。
「すまない、カiティス」オクタヴィウスは小さな声で謝った。
「早いとこ頼むぜ、兄ちゃん!」タクシーの運転手が怒鳴った。
「わたしはきみの兄ではない」オクタヴィウスは冷たく言い返した。
「ああ、そうさ!タクシー代はどうなってる?」
「カーティス」オクタヴィウスはコートの右ポケットに向かって顎をしゃくった。
「財布を取ってくれないか。この男にあと一Oドル払わなきゃならん」
「いいとも。わた」が払うよ」コナーズはポケットから紙幣の束を取りだし、一〇ドル札を器用に一枚引き抜いた。
「カーティス、それは困るー」
「いいから、オットー。気にするな」コナ1ズはオクタヴィウスの言葉をさえぎり、運転手に料金を払った。
「これくらいさせてくれたまえ。なんといっても、わざわざここにまで足を運んで、学生たちに講義するのを承知してくれたんだから」
「ああ、まあ……たしかにそうだが」オクタヴィウスは認めた。「よし。その代わり、終わったら昼食をおごらせてくれよ」
金を払い終わったコナーズは、友人の荷物をひとつ手にとった。
「”手を貸してくれ”だなんて、ほんとうにすまなかった、カーティス。無神経だったよ」
「ばかばかしい」
「きみは本物のヒーローだ」オットーは言った。
「軍医として海外の戦地に赴ぎ、迫撃砲弾を受けて、片腕を失った。わたしにはとうてい真似のできない行為だ」
「ああ……おかげで外科医とLての未来はおしまいになった」コナーズは軽い口調でそ至百ったが、彼の心の傷がまだ癒えていないのは明らかだった。
「だが、あそこへ行ったのは、わたしが必要とされていたからだよ、オットー。それに分子生物学は実に面白い学問だし……学生たちも実に優秀だ」
「将来性のある学生がいるのかい?」
「何人かね。そのなかのひとりはとくに有望なんだ。ピーター・パーカーだ。素晴らしい能力を持っている。ところが、まったくずぼらな性格でね。研究に打ちこむことがでぎれば……」
「まあ、若いもんは仕方がないさ」オクタヴィウスは肩をすくめた。
「たいていは夢みたいなことばかり考えているものだ」
スパイダーマンはめまいがするほど鋭い弧を描いてフラティ・ンビルの角をくるっとまわり、ブ・ードウェイの真ん中に入った。次の糸を放ちながら、続けざまにもう一本飛ばして、通りを左へ右へと斜めに横切る。
「スパイダーマンだ!」歩行者が指をさしつつ叫びながら、大急ぎでカメラを取りだすのが目に入った。
だが、彼らがファインダーをのぞくころにはすでに消え去っているはずだ。
これだけ時がたっていても、こういう場面には心が躍る。
とはいえ、またしても授業に遅れるのは憂鬱だった。
今日こそは間に合うはずだった。
そのためにじゅうぶんな時間をとって家を出たのだ。
ところが、こんな朝早くから仕事をしている勤勉な強盗にでくわし、次々に悪いことが重なって……結局、またもや遅刻寸前。
おおあわてで糸を飛ばしながら街を横切っているのだった。
宿題と教科書はリュックのなか、リュックは当然、背中にある。
“スーパーヒーロー”がリュックをしょってるなんて、少しばかりカッコ悪いが、マスコミが何かにつけ使いたがるこのレッテルは、もともとあまり好ぎではない。
”スーパー”なんて、彼の好みからすると大げさすぎる。
大学に近づきながら、ピーターは、先週の火曜日、コナーズ博士が授業の終わりに灰めかした特別ゲストのことを考えはじめた。
教授は曖昧な言い方をしていた。
この”特別に招待したゲスト”は、諸君がかならず関心を抱くにちがいない、魅力的なアイディアと理論を持っている、と言っただけだ。
コナーズがなぜゲストの名前を言わなかったのか、ピーターにはさっば
りわからなかったが、まあ、何か理由があるのだろう。
彼の授業のことを思い出すと、ピーターは苛立ちを感じた。

 

 

(本文P. 5〜7より引用)


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