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 グッドラック
著者
A.ロビラ 著 F.T.D.ベス 著
出版社
ポプラ社
定価
税込価格 1000円
第一刷発行
2004/06
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ISBN 4-591-08145-1
 
7日目の朝、彼らが出会った奇蹟の光景とは・・・。世界50カ国19言語で出版決定。小説か?哲学書か?それともファンタジーか?すべてをそなえた比類なき物語、ついに日本上陸!
 

本の要約

この本を書くのには八時間しかかからなかった。だが、この本を考えるのには三年もの月日がかかった。人はもしかしたら「たった八時間か」と思うかもしれない。だがもしかしたら、「三年もかかったのか」と思うかもしれない。前者は、運の訪れを待つ者たちのこと。後者は、幸運への下ごしらえをできる者たちのこと。



オススメな本 内容抜粋

よく晴れた、ある春の日の午後。
六十四歳になる初老の男、マックスは、セントラルパークのお気に入りのベンチに腰かけていた。
カジュアルながらもどこか上品な身なりをして、木汝を優しく揺らす風のなか、行き過ぎ
るカップルや走りまわる子どもたちを眺めていた。
そうやって気持ちを静かにして草の上に素足を投げ出していると、これまで必死に働いてきた日汝が遠い昔のことのように感じられた。
なにもかもが過ぎ去り、自分はいま満ち足りた気分でのんびり青空の下に座っている。これほどの幸福があるだろうか。
マックスは深汝と息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
そのときだった。マックスのとなりにひとりの男が腰を下ろした。
見ると、どうやらマックスと同年輩のようだ。彼は男が座りやすいように横にずれながら、そっと男の顔を盗み見た。
「どこかで見たことのある顔だ……」
男の青い目を見ていると、なぜか遠い昔に会ったことがあるような気がしてならなかった。
男のほうも、マックスの顔をじっと見つめていた。なにかが胸につかえているように目を細めながら。やがて、男は口を開いた。
「もしかして、マックスかい……?」
その言葉に、マックスの頭に懐かしい名前が浮かんだ。
「ジム!?」
「やっぱり!そうだと思ったんだ!」ジムが叫んだ。
「まさか、こんなことがあるなんて!」マックスも、思わず大声を出していた。
ふたりは笑いながら立ち上がると、相手を確かめるように、しっかりと握手を交わした。
マックスとジムは、少年時代の親友だった。
お互いニューヨークのブロンクスに住み、家族ぐるみのつきあいをしていたのだ。
しかし、十歳 のころジムたちが黙って引っ越してしまってからというもの、すっかり音信が途絶えていた。
それがまさか、こんなところで会えるとは。
ふたりにとってそれは、驚くべき幸運だった。
「それで君は、あれからどうしていたんだい?」
ひととおり昔話に花を咲かせた後、ジムが言った。
「わたしは、あの後すぐに働きはじめたんだ」マックスが答えた。
「知ってのとおり、うちは貧乏だったからね。学校になんて行かせてもらえなかった。最初に洗車の仕事をやって、次はホテルのベルボーイ。あとは知り合いに紹介してもらいながら、高級ホテルのドアマンの仕事なんかを転々としていったんだ」
「そうか。それは大変だったね」ジムが感慨深げにうなずいた。
「いや、そうでもなかったんだよ」マックスはいたずらっぽい笑顔を浮かべた。
まるで十歳の少年に戻ったかのように。
「二十二歳で経営者側に回ってからは、どんどんうまくいくようになったんだ」
「へえ」ジムは興味深そうに身を乗り出した。
「いったいどんな仕事をしたんだい?」
「カバン作りだよ」マックスは答えた。
「貯金をぜんぶはたいた上にローンを組んで、小さな工場をひとつ買ったんだ。
工場と言っても、家と作業場がくっついた粗末なものだったけどね。それでも、どんなカバンを作ればいいかはよく分かっていたから、それほど不安じゃなかった」
「というと?」
「レストランやホテルで仕事をしているあいだに、金持ちがどんなカバンを持ちたがるのか、いやというほど見てきたからね。それと同じようなものを作ればよかったのさ」

 

(本文P. 8〜11より引用)


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