ただひとりに誓う永遠の愛。幸せを恐れない強い声。伝説のバンドJUDY AND MARYボーカリストYUKIの笑顔と涙の軌跡！ GIRLY★シリーズ完結編「フォト＆ストーリー集」第3弾
“光と影”というテーマのもと、カメラマン＝レイク・タホ、アート・ディレクター＝平野文子のタッグにより、大自然のパワー溢れるマウイで撮り下ろされた最新フォト約80ページ。ライター＝佐々木美夏によるストーリーは、JUDY AND MARY再始動から解散、ソロ・デビュー、結婚、妊娠、出産と、まさに激動の日々となった４年間の物語。アーティストとして、またひとりの女性として光を放ち続けるYUKIの姿がここにある。

ひとつだけ

１年近い活動休止を経ても、ＪＵＤＹ　ＡＮＤ　ＭＡＲＹの状況はほとんど変わっていなかった。
表面上は穏やかな顔を見せてはいたが、前へ進んでいこうとする力は希薄に思えた。
このままではアルバムのレコーディングに入ることはできない。
いい曲ができたら、そのたびに少しずつ録っていこう。
それがまとまったらアルバムになると思うから。
ＴＡＫＵＹＡの提案で、バンドはようやく前に進み始めた。
ＹＵＫｌは元気だった。
高校時代に友達と興奮してささやき合った「１９９９年地球滅亡説！。いつのまにかそのＸ−ｄａｙは過ぎ、２０００年というミレニアム・イヤーを迎えられたことを素直に喜んでいた。
（９９年も無事に過ごせた！最高！２０００年はいろいろあるぞ〜。変わることが楽しみだ。どんどん新しいものに触れていこう）
新しい年の新しい生活のなかで、ゆっくりと振リ返る。
ずっと、目の前にあるもののことだけを考えてきたら、すべてがごく当たり前に、それでいてドラマチックに、変化してきてしまった。
そんな自分の人生が、なんだかとてもおもしろい。
そのいっぽうで進路が定まらないＪＵＤＹＡＮＤＭＡＲＹ。
佐久間正英プロデュースでＴｈｅ　Ｂ−５２ｓのケイトとダブル・ボーカルの任を負ったＮｉＮａのおかげで歌唱力がついたＹＵＫｌは、「ＢｒａｎｄＮｅｗＷａｖｅＵｐｐｅｒＧｒｏｕｎｄ」のレコーディングでＴＡＫＵＹＡにほめられ、仕上がりにも大満足だった。
しかしかつてはいい作品ができるたびに全員でガッツボーズを取ることができたバンドは足並みが揃わず、盛リ上がりにもマジックにも欠けている。
（やっぱりこんなもんなのかなあ）
それでも久しぶりのライブは楽しかった。
ファンクラブ会員限定のツアー“ＷＥＬＣＯＭＥ２０００　ＪＡＭＰ　ｍｅｅｔｉｎｇ”。１月１９日のＺｅｐｐＯｓａｋａから２７日のＺｅｐｐＴｏｋｙｏまで計５本。
約１年ぶりのステージとなるこのライブの目玉は、ファンによる抽選で曲を決めるコーナーだった。
予想外の曲を引き当てられてしまい、頭を抱えるメンバー。
うろたえたり、開き直ったリ、顔を寄せ合ってスコア（楽譜）をのぞき込んだり、という滅多に見られない４入の姿に客席は沸いた。
どんなに大きくなっても決して遠くへは行かないこのパンドを、ファンはみな愛していた。
アンコールは１曲のみ。
「ＰＥＡＣＥ」という仮タイトルの曲だった。
ＴＡＫＵＹＡがキーボードを弾き、ＹＵＫＩが言葉を落とすように歌う。
リパーサルをしながら詰めていった歌詞は、まるで“祈リ”のように聴こえた。
この曲がやがてＪＵＤＹ　ＡＮＤ　ＭＡＲＹのラスト・シングルになることは、まだ誰も知らない。
作った本入たちでさえも、その後の展開は予想していなかった。
２月２３日、「ＢｒａｎｄＮｅｗＷａｖｅＵｐｐｅｒＧｒｏｕｎｄ」リリース。
テレビ出演もこなし、ＪＵＤＹ　ＡＮＤ　ＭＡＲＹ復活が世間に知れわたった。
３月２３日に出た初のベスト・アルバム　『ＦＲＥＳＨ』もチヤートをにぎわした。
まだ出すつもりはなかったベストだったが、「今までＪＵＤＹ　ＡＮＤ　ＭＡＲＹを聴いてこなかった人にも聴いてもらいやすいものを出そう」というレコード会社のスタツフの言葉に納得し、ＧＯサインを出した。
（「ＰＯＷＥＲ　ＯＦ　ＬＯＶＥ」を今聴いても、全然古くないなあ。やっぱリ私たち、本当のベスト・アルバムが出せるほど長くやってないんだ）