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 夜回り先生
著者
水谷修/著
出版社
サンクチュアリ・パブリッシング
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2004/02
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ISBN 4-921132-54-2
 
不登校、ひきこもり、リストカット、薬物乱用…12年間夜の街を回り、5000人の生徒と向き合った「夜回り先生」が激動の半生を振り返る。
 

本の要約

■おすすめコメント
フジテレビ「とくダネ!」で紹介!「悩んだら電話しなさい。水谷は、どこでも会いにいくよ。」不登校、ひきこもり、リストカット、薬物乱用… 12年間夜の街を回り、5000人の生徒と向き合った「夜回り先生」が激動の半生を振り返る。 なぜ夜の街の子どもたちが、水谷先生にだけは「心をひらく」のか、その答えがこの一冊におさめられている。
[目次]
夜回り水谷;闘いの出発点;傷つけられた少女;哀しい成人式;償いきれない過ち;生い立ち;ケンジ;貧しさ;中国から来た少女;姉妹〔ほか〕



オススメな本 内容抜粋

私は12年前に夜間高校の教員になった。
そして時を同じくして、私は夜の世界、闇の世界の住人になった。
この本を読んでいる多くの人たちにとって、まったく縁のない世界だろう。
みなさんは、昼の世界の住人だと思う。
美しい花や鳥の声、なによりも暖かい太陽の光に包まれ、きっと幸せな生活を送っているはずだ。
しかし私は違う。
私が学校で授業をするのは夕方5時から夜9時で、週のうち何日かはその後「夜の街」へと出かける。
そこでピンクチラシや風俗の立て看板を片付けたり、盛り場でたむろする子どもたちに声をかけている。
私が住む夜の街は、白黒の世界だ。
心ときめくような彩りがあったとしても、それは偽りの彩りであり、薄汚れている。
街で交わされるやさしい言葉たちも、子どもを食い物にしようとする悪意にまみれたものばかりだ。
警察は、私のことを「日本で最も死に近い教師」と呼ぶ。
中でも口の悪い 警官は「あんたはいつか頸動脈を切られて死ぬか、おもりをつけて海に沈められるぞ」と言う。子どもたちを守るために、たとえ暴力団の事務所でも、暴走族の集会でもかまわず突入していくからだろう。
そんな私が21年間の教員生活を振り返り、ただひとつだけ胸を張れることがある。
それは、一回も生徒を叱ったり、殴ったことがないということだ。
私は絶対に生徒を叱ることができない。
なぜなら子どもたちはみんな「花の種」だと考えているからだ。
どんな花の種でも、植えた人間がきちんと育て、時期を待てば、必ず花を咲かせる。
これは子どもも全く同じで、親や学校の先生、地域の大人たちやマスコミを含む社会すべてが、慈しみ、愛し、丁寧に育てれば、子どもは必ず美しい花を咲かせてくれる。
もし花を咲かせることなく、しぼんだり枯れたりする子どもがいれば、そ
れはまぎれもなく大人のせいであり、子どもはその被害者だ。
私はそんな被害者である子どもたちとの出会いを求め、ずっと夜の街で生
きてきた。
それはきっと彼らを救うためではなく、ただ単純に、彼らのそばにいたかったからだ。
夜の街の子どもたちは、どんなに虚勢を張っていようとみんな弱い。
そして時々ふっと哀しい目をする。
彼らも本当は昼の世界で、親や先生に認められたい。
でも昼の世界は決して彼らの存在を認めない。彼らを痛めつけ、夜の街へと追いやる。
だから彼らはいつも愛に餓えている。
そして最も私を必要としてくれる。
この12年間、私は夜の世界で何千人もの子どもたちと出会ったが、そのすべてが哀しいものだった。
でもそのすべてが素晴らしいものだった。
後悔はない。
ただひとつの後悔も。

(本文P. 31〜35より引用)


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