はじめに
古代ギリシャの哲人の言葉として知られている「汝自身を知れ」は、今日でもその意義は失われていません。
文明化の進んでいる今日でも、この言葉は人間の生きていくための金言だと思います。
私たちはとかく外界に関心があり、他人と比べることによって順調にことが運ぶと思っています。
多くの人が、自分について自分がいちばんよく知っていると誤解しています。
そのことが人生のさまざまな失敗、不幸を招いているのです。
これは人間の心理的盲点とでも言っていいでしょう。
では自分をよく知るにはどうすればいいのか?
心理学的立場から言えば、自分をよく知るということは、自分の行動パターン、生活態度、さらには信念、価値観、人生観などを知ることです。
そしてどの点を改めるべきかを自覚することなのです。
私たちの行動傾向には自分らしさとともに、京都人らしさ、九州人らしさ、東北人らしさというような社会的傾向性、さらには、日本人らしさという文化的傾向性を長い生活のなかで形成してきました。
「汝自身を知れ」には、こうした幾重にも積み重ねられた人間の傾向性を知ることにほかならないのです。
本書は、「ほんとうの自分を知るために」「あなたが職場でもっと輝くために」
「あの人との関係を深めるために」「これからの幸せを見つけるために」の四章から成り立っています。
人生のなかで大切な場面をどうとらえればいいのか、また一度の人生をどう生きればいいのかの手がかりを示しています。
とくに自己像に対する具体的な事実を獲得できるように工夫しました。
自分の表現の仕方、自分のみかけを自覚し「人から愛される自分」をつくるヒントがあるはずです。
しかし、注意しなければならないのは、人間ならだれもが持っている不精と億劫という習性です。
つまり、「知っているけどやらない」という愚行です。
「汝自身を知れ」の深い意味が、そこにはあるということを最後につけ加えておきます。
二〇〇二年一月
本明寛
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Q01
あなたは思ったことを表現できる人ですか?できない人ですか? |
─あてはまるものすべてに○をつけてみましょう─
1,友人の誤った考えや行動に気がつくと、忠告をしたくなる
2,研修や会議などでは、後ろのほうやなるべく目立たない席に座ることが多い
3,自分の権利を主張する必要があるときは、きちんと意見を言わなければいけないと思っている
4,もしも買ったものが、にせ物や不良品だったとわかったら、取り替えに行くか、クレームをつけるほうだ
5,「試合に負けて、勝負に勝つ」という考え方には賛成である
6,子どものころは人のいいなりになっていたことが多いと思う
7,レストランやホテルなどで、従業員の態度が悪くても文句は言わ
ないほうだ
8,自分の近くでタバコを吸われて困るときは、やめてほしいと言っ
てしまう
9,自分が正しいと思うことは、どこまでも主張するほうである
10,「もっと自分の思い通りにやれたらなあ」と思うことがある
11,反対意見があっても、あまり気にしないでことを進めるほうだ
12,自分が並んでいる列に割り込もうとする人がいるときは注意して
しまう
13、どんな場においてもほかの人ほど自己主張はしないほうだと思う
14,政治的なことへの不満はほとんど口にしない
15,道をたずねようとするとき、全く知らない人にはたずねるのは気
がひけるほうだ
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解答欄
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A01 答え
⇒⇒⇒ このテストからあなたの自己主張の強さを見ることができます
テストの採点方法は、1、3、4、8、9、10、11、12の番号 に○をつけた合計をかぞえます.五つ以上○があった人は、自己主張の強い人です.自己主張をすることは勇気がいりま
すが、相手の気持ちを尊重して発言すれば、気持ちが通じ合 うものです。
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自己主張ができる人というのは、誰かの意見に乗っかって行動した
り、頼ったりしないので、自分の意志で行動できる人と言い換えても
いいでしょう。
人前で勇気を持って自分の考えを主張するのは、「恥ずかしい、嫌
われたらどうしよう」という思いが先立って、なかなかむずかしいも
のです。明らかに、自分のほうが正しいと思っていても、「あなた、
それは問違いですよ」と口に出すのをためらってしまうものです。
しかし、自分の気持ちを相手にうまく伝えることができないと、か
えって悩みやストレスを抱え込んでしまうことになります。
とくに自己主張の弱い人は、恥ずかしさから自分の意見や考えを口
に出すことをためらい、意見を胸のなかにしまいこんですませてしま
うような、気の弱いところがあります。こういう人は相手の気持ちを
尊重しすぎるあまり、他人の欲求を受け入れてだまされてしまうとい
う傾向もあります。
現代社会では、謙遜して意見を言わないでいると、表情の乏しい気
の剃い人、“分の意兄を持たない人と見られてしまう傾向があり、必
ずしも美徳になるとは限りません。
また、我慢ばかりすることによって、たまったストレスが、突然爆
発してしまうことも考えられます。そうなると、それまで築き上げた
人間関係までおかしくなってしまうことにもなりかねません。
反対に、他人や相手の言うことをあまり取りあわず、自分の考えが
正しいと思えば、堂々と白分の意見を押し通す人もいるでしょう。と
もすると「強い個性」と見られる白己主張の強い性格ですが、こうい
う人は他人の意見に惑わされることなく、自分の考えを主張できるの
で、ストレスや不安感を持つことはあまりないでしょう。
しかし、白己主張とは、やみくもに反対したり、相手をうち負かす
ことではなく、相手の立場を考えて、自分の意志や気持ちを素直に表
現することです。
相手の気持ちを尊重した自己主張は、かえって好感を持たれること
になるはずです
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