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 蛇にピアス
著者
金原ひとみ/著
出版社
集英社
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2004/01
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ISBN 4-08-774683-6
 
暗い時代を生き抜く若者の、受難と喪失の物語
 

本の要約

2003年 第130回 002−芥川賞受賞
ピアスの拡張にハマっていたルイは、2つに分かれた舌を持つ男と出会い、舌にピアスを入れる。暗い時代を生きる若者の受難と復活の物語。


スプリットタンって知ってる?舌を二つに裂く、“身体改造”。行き場のない時代を生きる若者たちが発する、痛みのメッセージ!――私の血肉になれ。何もかも私になればいい。何もかもが私に溶ければいい――。ピアスの拡張にハマっているルイ。二つに分かれた舌を持つ男との出会いをきっかけに、舌にピアスを入れ、裂き続ける・・・。


著者紹介
        金原ひとみ 

1983年8月8日東京都板橋区生まれ。
99年文化学院高等課程中退。
芥川賞受賞作で、第27回すばる文学賞受賞。


オススメな本 内容抜粋

「スプリットタンって知ってる?」
「何?それ。分かれた舌って事?」
「そうそう。蛇とかトカゲみたいな舌。人間も、ああいう舌になれるんだよ」
男はおもむろにくわえていたタバコを手に取り、べろっと舌を出した。
彼の舌は本当に蛇の舌のように、先が二つに割れていた。
私がその舌に見とれていると、彼は右の舌だけ器用に持ち上げて、二股の舌の間にタバコをはさんだ。
「……すごい」
これが私とスプリットタンの出会い。
「君も、身体改造してみない?」
男の言葉に、私は無意識のうちに首を縦に振っていた。
スプリットタンていうのは主にマッドな奴らがやる、彼等の言葉で言えば身体改造。
舌にピアスをして、その穴をどんどん拡張していって、残った先端部分をデンタルフロスや釣り糸などで縛り、最後にそこをメスやカミソリで切り離し、スプリットタンを完成させる。
と、彼は手順を教えてくれた。
ほとんどの人はこのやり方で改造するらしいけど、中にはピアスなしでいきなりメスをいれる人もいるという。
大丈夫なの?舌噛み切ると死ぬんでしょ?っていう質問に、蛇男は淡々と答えた。
焼きゴテを当てて止血するんだよ。
手っ取り早いけど、さすがに俺はピアス使ったね。
ピアスでやると時間はかかるけど、いきなり切るより縞麗な切れ目が出来るんだ。
私は血まみれの舌に焼きゴテを当てるシーンを想像すると、腕に鳥肌が立った。
今、私の右耳にはOGのピアスが二つ、左耳には下から0、2、4Gのピアスが並んでいる。
ピアスのサイズはゲージという単位で表され、Gと略される。
ゲージは、数が小さくなっていく程太くなっていく。
普通の、耳のファーストピアスは、大体16Gから14Gで、太さは一・五ミリ程度。
OGの上は00Gで、これが九・五ミリ程度。
それ以上の物は分数で表され、一センチを超える。
でも、はっきり言って00超えてしまうとどこかの民族みたいで、かっこいいとか悪いとかの話ではなくなってしまう。
耳の拡張でもかなり痛いと思ったのに、舌の拡張なんてどれだけ痛いのか想像がつかない。
元々16G程のピアスをしていた私はクラブで知り合った二つ年上の女の子、エリの00Gに憧れて拡張を始めた。
「かっこいいね」と言うと、エリは「ここまでやっちゃうともう細いの使わないから」と言って12から0までのピアスを何十個もくれた。
16から6くらいまでは、難なく拡張出来た。
4から2、2から0、これはもう拡張そのもの。
穴には血がにじみ、耳たぶは赤く腫れ、二、三日はじんじんしている。0にするまでに三ヶ月もかかった。
エリの信念「拡張機は使わない」、これを私も引き継いだ。
そろそろ私も00に踏みだそうかと思っているところだった。
拡張にハマっていた私はスプリットタンの話をかじりつくように聞いた。
男はまんざらでもなさそうに語ってくれた。
そして数日後、私はその蛇男ことアマと二人でパンクなDesireに来ていた。
その店は繁華街の外れの地下にあって、入るなり目に飛び込んで曹たのはもろに女性器がアップの写真。
ビラビラの部分にピアスが刺さっていた。

(本文P. 3〜5より引用)


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