ちまたには日本科学技術大学教授・上田次郎の『どす来い、超常現象』（※１）というインチキ臭い本が出回ってるそうですね。しかもそこそこ売れてるみたいですけど、あそこに書かれていることは１／８くらいフィクションです。
あそこに書かれた事件の数々は、本当は私が解決したものばかりなんです。
どんな不思議も物理学でたちどころに、ぶっつりと解決できる……なんて上田さんは言ってますけど、私が“トリック”を見破ることによって解決できたんですから。
それに気づいて私に真相をしゃべらせようなんて言ってくるなんて、目のつけどころがいいですね。
民俗学者・柳田黒夫やルポライター・小松純子の本を出すより売れるんじゃないですか。
でも最初はびっくりしましたよ。
私がしゃべったことが本になるなんて。
あ、話すだけでいいんですよね。文章書くのはあんまり得意じゃないんで。
一度、雑誌の体験レポートを書くバイトをしたことがあるんですけど、結局、原稿は未掲載だったし……。
ボツ？いえいえ諸般の都合により未掲載です。
ホントですよ。
母は書道教室の先生をしてますけど、字にも自信ないし。
漢字は読むのも書くのも……ちょっと。しゃべるだけですよね。
はい、安心しました。
いいでしょう、これまで私が解決してきた事件のことを話しましょう。
これは単なる事件解決の自慢話ではありません。
手品のＨＯＷＴＯ本でもありません。
世の中の不思議な現象に果敢に挑んだ、山田奈緒子という孤高の超天才マジシャンの闘いの記録なのです。
ついでに、仕事柄、今まで秘密のべールに隠しておいた、神秘に満ちた人気マジシャンとしてのライフスタイルもちょっぴり公開しちゃいます。
では、最後までお楽しみください。

山田奈緒子

（本文Ｐ. 6〜7より引用）