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 たったひとつのたからもの 息子・秋雪との六年
著者
加藤浩美/著
出版社
文芸春秋
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2003/11
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ISBN 4-16-365450-X
 
ありがとう、秋雪。全国に感動を呼んだ写真が一冊に そのほほえみだけで幸福にしてくれた。重度のダウン症で六年三カ月の命を閉じた息子を撮り続けた母の記録。明治生命CMで話題に。
 

本の要約

小田和正の歌をバックに流れる明治生命のCM。小さな男の子と家族の写真が数枚切り替わる。海を背景に父親が息子を抱きしめている写真で終わる、わずか数十秒のCMが全国的に話題を呼びました。男の子の名は加藤秋雪くん。生後一カ月でダウン症と判明、心臓の合併症で一年の命と告げられます。しかし秋雪くんは六年余りを精一杯生きて、一九九九年に世を去りました。この本は、秋雪くんの一生をレンズを通して見つめ続けた母親、浩美さんの記録です。いちばん大切なものは何だろう。そう自分に問いかけたくなる本です。


『ありがとう、秋雪。』このフレーズと“たったひとつのたからもの”の秋雪君とそのお父さんの写真。
一度見たら、なかなか忘れることの出来ない表紙。
親子の絆とその愛情の深さ、そして、生命の尊さ・・・・この本から、本当の愛を学びました。
この本の感想をBBSから伝えます。 <秋雪君とご両親へ BBS


オススメな本 内容抜粋

プロロー グ
たったひとつのたからもの

そのCMを初めて見たのは、一九九九(平成十一)年の晩秋のころだっただろうか。
たまたまつけていたテレビ画面を何気なく見ていたら、「言葉にできない」の歌と共に数枚の写真が次々と現れた。
小田和止さんの歌声、まっすぐ心に突き刺さってくる歌詞、暖かさにあふれた写真……。
これは一体何!?生命保険会社、明治生命のテレビ・コマーシャルだった。

あなたに会えてほんとうによかった

うれしくてうれしくて。

言葉にできない


この歌詞が頭から離れず、秋雪の姿が頭の中でかけめぐる。
不意に涙が出てきた。
その年の年頭に秋雪を失くしてから、落ち込んだ私を支えてくれた大切な歌はたくさんあった。
でも、このCMから伝わってきたものは何かが違っていた。
三十秒ほどの映像を通じて、家族三人で過ごした日々がいかに幸せだったか……を、おだやかに思いかえすことができたのだ。
そう、たしかに幸せな時間がたくさんあったよね。
心の中で何かがふっきれた。
翌年、一月号のカメラ雑誌でフォトコンテストの広告を見つけた。
「あなたの撮った写真がテレビ・コマーシャルになります」
「テーマは『しあわせな瞬問」」。
あのCMだ!とっさに白分の撮った一枚の写真が頭に浮かんだ。
もし、入賞したら、大好きなCMの仲間になれるかもしれない。
秋雪と生きた六年間、我が家は幸せだらけだったという事実を形に表わせる良いチャンスだとも思った。
秋雪の大好きな海で撮った一枚を応募した。
秋雪の人生で景後の海だった。
シャッターを切った瞬間、秋雪のおだやかなほほえみを残すことができたと感じた一枚だ。
作品名「たったひとつのたからもの」。
秋雪のことだけではない、この写真を撮ったときの秋雪と主人と私、家族三人の存在そのものに想いを込めて名づけた。
三月になって、入賞内定の電話が入った。
うれしさと驚きと……いろいろな気持ちが入り混じり、鳥肌が立った。
秋雪の写真には「しあわせ」の太鼓判が押されたんだね。
テレビ放映の前に送られてきたコマーシャルのVTRに、主人と二人、ドキドキしながら見入っていると、「愛情篇」三十秒の中の約二秒に、小田さんの歌声と一緒の秋雪の姿があった。
「うわっ、入ってる」。
思わず口から出た言葉。
やがてテレビ放映が始まり、たくさんの人からさまざまな感想をいただいた。
私が思ったことは、ただひとつ。
秋雪をひざの上に乗せ、ぎゅっと抱きしめ、わくわくしながら一緒にCMを見られたら良かったのにな一……。
秋雪は空のどこかで、テレビから流れる自分の写真を見つけることができたのかな。
夢の中でいいから、何か言ってくれないかな。
「お母さん、ぽくも一緒に見ていたよ」と。

(本文P. より引用)

 

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