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 ならずもの国家アメリカ
著者
クライド・プレストウィッツ/著 村上博美/監訳 鈴木主税/訳
出版社
講談社
定価
本体価格 2200円+税
第一刷発行
2003/11
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ISBN 4-06-211648-0
 
今やアメリカこそが「ならず者国家」。レーガン政権時、日本バッシングの急先鋒と言われた著者がな国際体験をもとに、アメリカの根本的な誤りを指弾。
 

本の要約

ブッシュとネオコンの野望を撃て!
傲慢・思い上がりがエスカレートする“ブッシュのアメリカ”に鉄槌を下し、迷走アメリカと復活日本のあるべき姿を提示する。

レーガン政権の中枢にいた「保守本流の論客」による警世の書
「善意」はなぜかくも誤ったのか?

環境問題に関して、アメリカは日本の面目を失わせるようなことをした。アメリカが京都議定書を受け入れられるよう日本が最善を尽くしたにもかかわらず、アメリカは批准しなかったのだ。また、日本が喜んで受け入れた包括的核実験禁止条約を、アメリカは拒否した。国際刑事裁判所についても同様だ。
日本は国連決議をPKO活動の根拠にするようアメリカに働きかけてきたが、アメリカは都合のいいときだけ国連を利用するだけで、時によっては国連よりも便利なNATOや別の機構を利用すると言ってはばからない。こんな関係は、確固とした基盤を共有する同盟ではない。いつ何時、何かの圧力がかかれば、すぐにでも崩壊しておかしくない。だから、この同盟をもっと持続的で有効なものにしたいなら、今こそ再考し、再構築することが必要なのである。――(本文より)



オススメな本 内容抜粋

我々は喜んで世界市民になりたいと思っている。
ただし、世界がアメリカ合衆国の延長になればの話だが。
ージェームズ・ウォーバーグ
(外交評議会)

第一章 世界と反目し、自らの理念にも反して

Rogue(ローグ)形容詞─もはや従順でない、逸脱している、受け入れられていない。抑制が利かない、理屈が通らない。常軌を逸し、異常に野蛮もしくは予測不能な性向をもつ。
─ウェブスタi大辞典


我々は「丘の上の町」であり、全ての人の目が注がれているのだと考えなさい。
一ジョン・ウィンスロップ

(新大陸で聖書に基づく理想社会の建設を目指した、マサチューセッツ湾植民地初代総督)

本書にはあえて挑発的な題名をつけている。
そこで初めに断わっておきたいのだが、私はアメリカを、サダム・フセインのイラクのごとき残酷な独裁政権と同列に置くつもりはない。
それどころか私は常々好んで自分の国を、『マタイ伝』五章一四節にある「丘の上の町」に喩えてきた。
たとえ時に輝きが曇ることがあったとしても、私にとってアメリカは世界を導く光となる理想の国だと信じてきたから。
私が「ならず者国家」という題名を思いついたのは、アメリカの古くからの友人をはじめ多くの外国人が、アメリカを、少なくともウェブスターの辞書にある「ローグ」の定義のような国と見るようになったためである。
フセインのような残忍な輩とは違うとはいえ、アメリカは「もはや逸脱
して、抑制が利かず、理屈が通らぬ、予測不能な性向をもつ」国家だ、と。
実際、二〇〇三年二月二四日月曜日の『ワシントン・ポスト』紙は一面に、世界の多くの人々はジョージ・W・ブッシュ大統領をフセイン以上に世界平和の脅威と考える、という記事を掲載している。
これはなにも、イラクをどうするのかという論議から急に降って湧いた話ではない。ロンドンの『ガーディアン』紙にこんな記事が掲載されている。
「”かけがえのない国”であるはずのアメリカは今や、究極のならず者国家の様相を呈しつつある。ブッシュのアメリカは、国際社会を率いるどころか、いよいよそれと対時する決心を固めているようだ。丘の上にある輝く町ではなく、(中略)聞こえてくるのはナショナリズムの鈴の音だ。我々アメリカはやりたいようにやる、(中略)それが気に入らないのなら仕方があるまい」、と。
この記事は昨日書かれたのではない。
二〇〇一年春にアメリカが、地球温暖化防止のための京都議定書を拒否した時のものである。
当時、世界各国の指導者との会談を終えて私は、諸外国の深刻なアメリカ離れと、それが急速に広がっていることに気づき始めていた。
その一連の出張の最終日、二〇〇一年九月一〇日午後三時四五分、サンフランシスコからワシントンのダレス空港行き四時発の便の最終搭乗案内を聞いて、私は足を速めた。
午後のフライトはこれが最終で、その後は寝心地の悪い夜間飛行便のみになる。
充血した目で次の日を迎えるのだけは避けたい。
疲れて体調が悪かったので、そのフライトは逃したくなかった。
そこで私は走り出し、扉が閉まりかけているボーイング777に飛び乗った。
この出張では、東京、シンガポール、ジャカルタ、そしてホノルルを回って、グローバリゼーションとアメリカが世界で果たす役割についてのいくつかの会議に出席し、様々な人と会談した。
私は海外での生活が長く、外交政策に関する研究所の所長を務めてきたので、アメリカと長年の友好国との間に溝が広がり、両者が疎遠になりつつあることに胸騒ぎを覚えていた。この出張でも、私の不安は鎮まらなかった。
国外から見えるアメリカの姿は、ますます醜いものになっていた。アジアでは、かつてヨーロッパと中南米で起こったように、アメリカ批判の声が高まっている。世界の諸国とたびたび衝突し、自らが掲げる理念とも食い違ってきたアメリカに対して、不安の声さえ聞こえてくる。
アメリカは最近、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)から離脱し、国家ミサイル防衛の配備を加速させ、中国を「戦略上のライバル」と言明したが、こうしたアメリカの動きは、新たな冷戦が始まるのではないかという危倶の念をかき立てている。
そのうえ、一九九七年から九八年の金融危機を目の当たりにして、アメリカが説く経済的グローバリゼーションの福音も、多くのアジア人の目には役に立たないものに映った。
しかも、アジアと中南米の発展途上国が経済の荒廃に苦しんでいるのを尻目に、アメリカのヘッジファンドと銀行は、かすり傷一つなしに難を逃れたのだ。
もはや、グローバリゼーションを帝国主義の新たな形態と見なす人人さえ現われた。
さらに私は、アメリカの単独行動主義的な傾向への批判も耳にした。
とりわけその傾向がはっきり現われたのは、アメリカの長年の同盟国や友好国を含む世界のほぼすべての国が批准したにもかかわらず、アメリカが、地球温暖化防止のための京都議定書と、地雷使用を禁止する国際条約を拒否した時だった。
私がこうした問題について考えながら帰路を急いでいた時、悲しいことに今や誰も忘れることのできなくなった出来事が起ころうとしていた。
その結果、人々の間で、アメリカが世界で果たす役割や言動への疑問が、急激に高まることになったのだった。

(本文P. 11〜13より引用)

 

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