バトル・ロワイアル2 鎮魂歌〈レクイエム〉 
Kinji Fukasaku film“Battle royale 2 requiem”official novelization
著者
高見広春/原案 深作健太/脚本 木田紀生/脚本 杉江松恋/著
出版社
太田出版
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2003/07
ISBN 4-87233-775-1
 
主要メディアがジャックされ、声明が流れる。「…賽は投げられた。オレ達はかつてオレ達を殺し合わせてきたすべての大人を許さない」 一方、政府によりバスごと拉致された中学生は…。オフィシャル・ノベライゼーション。
 

「今日はみんなに、ちょっと戦争をしてもらいます」。七原と中川があの島を脱出して2年。世界はテロの時代に突入。反BR法組織のリーダーとなった七原は、連続爆破テロリストとして国際指名手配。三〇数名と戦艦島に潜伏、大人達は「正義」の名の下に〔BR?〕を開始した・・・。すべてのオトナに宣戦布告の、衝撃バイオレンス傑作!

バトル・ロワイアルU 鎮魂歌[レクイエム]/杉江松恋
主要メディアがジャックされ、七原秋也の声明が流れる。「…賽は投げられた。オレ達はかつてオレ達を殺し合わせてきたすべての大人を許さない」。一方、政府によってバスごと拉致された中学生は…。前作から3年、100万部を超える大ヒットを記録した前作をはるかに凌ぐスケールで展開する、衝撃の第2弾!!7/5より全国東映系にていよいよロードショーも開始します!



地下道に、足音が響いていた。
ほとんど爪先立ちで走っているのだろうか。
片足が路面に触れては、すぐにまたはね上がる。
交互に繰り返される靴音が、まるで水面を切って飛んでいく石の音のようだった。
「パパ、はやく一」
という声が通路に響いた。甘く、上ずった声だ。
走りながら楽しそうに笑っている。
少女の笑い声だった。
その後ろから、ゆっくりとした足音が続いていた。
「こらあ、待ちなさい、仁絵」
少女は、はしやぎ声をヒげながら父親の制止を振りきり、地上に続く階段を上っていった。
「きれーい」
少女は、そこで立ち止まった。
思いきり見開いたその瞳に、「世界」が映っていた。
広い道の両側に街路樹が立ち並び、きらめくものがたくさん飾りつけられていた。
足早に通り過ぎていく大人たちも、今日はなんだか華やかな身なりをしている。なにより、澄みきった空を背景にそびえる建物がすばらしかった。大きい。
少女の目には、天上まで届いているかのように見える。
頂きは、二つに分かれていた。
まるで、顔を合わせて相談する二人の巨神を見ているようだった。
壁面には、少女には読めない文字が描かれている。
読めない。しかし美しい。
「すごい、きれい」
背後から抱き寄せられた。
「つかまえた」
振り返った。少女の父親の優しげな笑みがあった。
「見て、すごくきれい。全部、キラキラしてる。
キラキラして、明るくて、それでいっぱいなの」
父親は、興奮してしゃべり続ける少女を抱き上げた。
しっかりと胸に受けとめ、そのまま歩き始める。
「そうだね。縞麗だね。今日は、クリスマス・イヴの日なんだよ。だから、特別に縞麗なんだ」
「ふうん」
少女は思いきり大袈裟に頷いた。
少女にとって、世界は未知の出来事だらけだった。
一日が過ぎるたびに知識は増え、何かを知るたびに世界はどんどん大きくなっていった。
知らないことがいっぱいある。
これからいろいろなことを知ることができる。
少女の胸は、その喜びで満ち溢れていた。
小さな右手を振りヒげた。
建物の壁面に書かれた文字を指さす。
「じゃあ、パパ、教えて。あれはなんて書いてあるの。あれもクリスマスなの?」
父親は微笑みながら指の示す方向を見上げた。
前方にそびえる巨大な建物の中ほどに、電飾で文字が描かれていた。
「MERRY X’MAS」と読める。
「あれは『メリー・クリスマス』って読むんだよ。クリスマスおめでとうって意味なんだ」
「ふううん」
少女は、もう一つ増えた知識を記憶に定着させようと、再びその文字を見つめた。
そのとき。
文字の記された壁面の窓ガラスをはじき飛ばし、黒い塊がこぼれ出てきた。
煙だ。
黒煙は瞬時にして膨れ上がり、建物の周囲に黒雲を作り出した。
その後ろに紅の花びらが散る。
(本文P.8〜9 より引用)


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