4TEEN
著者
石田衣良/著
出版社
新潮社
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2003/05
ISBN 4-10-459501-2
 
14歳は、空だって飛べる。月島青春ストーリー
 

木造の長屋とスカイラインを切り取る高層ビルが共存する町・月島で、ぼくたちは恋をし、傷つき、死と出会い、慰め合い、大人になっていく。瑞々しい八つの物語で描く今どきの十四歳、青春物語。



始まりは春休みにはいったばかりの月曜日。
ぼくは月島駅の階段をのぼったところにあるマクドナルドのまえにいた。
もんじゃ焼きの店が百軒はある西仲通りのほうの出口だ。
マウンテンバイクにのったまま片足をガードレールにかけたり、ときどきはその足もはずしてスタンディングスティルの練習をしたりしながら、クラスの友達を待っていた。
午後三時、斜めの光りに薄オレンジの縞になった横断歩道をわたって、最初に内藤潤がやってきた。ジュンはぼくと色違いのトレックのマウンテンバイクにのってる。
真っ赤なフレームにリアサスつき。
背が低いからサドルの位置はだいぶした。
ちなみにぼくのは青だ。
「ダイはまだ」
ジュンは顔の半分くらいある黒いセルフレームのメガネを中指で押しあげていう。
ぼくは肩をすくめた。
小野大輔はもうひとりの待ちあわせ。
ダイはだいたい時間に遅れる。
「それよりナオトは大丈夫なのかなし今度はぼくがきいた。
「わかんないよ。うちにも連絡網で電話があっただけだから。でも終業式まで元気そうだったのに、いきなり入院するな……」
ぼくたちのうしろで自動ドアが開いた。
「よう、待った」
ダイの太った声がする。
胸のまえにあだ名の元になったフレンチフライをもってマックをでてきた。
ダイは大輔のダイじゃなくて、フレンチフライの大中小のダイ。
揚げ油の臭い。むりやり締めたベルトの上下から、ポテトでいっぱいの中身がこぼれそうだった。
「いこう、時間だ」
ぼくが声をかけるとダイはジュースでものむように口のなかにポテトの残りを流しこんで、あさひ銀行のほうヘママチャリをとりにいった。うしろから見てもほっぺたの肉が顔の横にでっぱっているのがわかる。
「つぎに入院するのはきっとダイだな」
ジュンがいう。
ぼくはすこし笑った。
三人がそろうと、ぼくたちはナオトの見舞いに出発した。
月島駅から隅田川の堤防まではほんの二百メートル。
横になったW字型の自転車用登坂路を立ちこぎでのぼると佃大橋だ。
先にのぼりきったぼくたちは橋のたもとでダイを待ってひと休みし
た。
眠たそうな灰緑色の隅田川の両岸には、ガラスとコンクリートの高層ビルが並んでる。
二十階建て、三十階建て、なかには五十階を越えるのもちらほら。
自分が生まれ育った街なのに、この橋からのこぎりみたいなスカイラインを見るたびに、どこか外国にでもいったような気がする。
ジュンも黙ったまま、いきなり開けた空を見あげていた。
鈍い青。
東京では広い空を見るのはめずらしいんだ。
(本文P.6〜7 より引用)


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