聖地巡礼
著者
田口ランディ/著 森豊/写真
出版社
メディアファクトリー ダ・ヴィンチブックス
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2003/04
ISBN 4-8401-0755-6
水に導かれ、人に出会い、土地と響きあいながら、自分だけの聖地を探す旅、旅。

精力的に取材・執筆を繰り広げる作家・田口ランディによる、『ダ・ヴィンチ』好評連載の紀行エッセイの単行本化。「こころが『しん』とする場所、それはきっとその人にとっての聖地なのだ……」人が「聖なる」ものを感じる場所場所を探して、全国11箇所の「聖地」を動物的な直感と不思議な人の縁に導かれて田口ランディがめぐった旅の記録。情感あふれる美しい写真を多数収。

奈良県の天川村の天河弁財天は、知る人ぞ知る「芸能の神様」である。
私が初めて天河弁財天の樽を耳にしたのは一九九九年、音楽家、宮下富実夫さんのスタジオでだった。
宮下さんは天河弁財天の神事に参加した際、弁財天様より啓示をいただいて信州の飯綱高原に居を移し、自らの音楽の方向性を見いだしたそうである。
「いやあ、天河は凄いところです」
と、宮下さんはしみじみと・おっしゃる。
当時の私は天河と聞けば内田康夫先生のミステリー、映画にもなった門天河伝説殺人事件』しか思い浮かばず、「へえ〜?」と口を開けてまだ見ぬ天河に思いを馳せた。
次に私が天河の樽を聞いたのは、小説家の鈴木光司きんの事務所でだった。
鈴木さんは執筆の前、自分の精神状態を高めるためにバイブレーショソの高い場所へ行くのだとおっしゃる。
「どんなところへ行くのですか?」とお聞きすると、
「やっばり天河弁財天とかいいですよ。そういえば中上健次さんも天河は気がいいと蔚っしゃってましたよね」
その池、宗教学者の中沢新一さんも細野晴臣さんとの対談集門観光』のなかで
「天河はとても気持ちのいい場所だ」ということを述べていらっしゃるし、神道学者の鎌田東二さんも「天河はスピリチュアルな場所」と太鼓判を押す。そうなのか、そんなに天河弁財天ってのはいいところなのか。ううむ。ぜひ私も一度行ってみたいもんだが、いったいそれはどこにあるんだ?弁財天様〜っ。どうか田ロラソディも天河に呼んでくださいませ。願いは通じるものである。ひょんなことから「天川彩」たる女性とインターネットを通じて知りあいになる。このアヤちゃんが、いきなり私に言うのである。
「私、二〇〇〇年の天河弁財天の節分祭にランディさんをお連れします。私がご案内しますから、いっしょに天河弁財天に行きましょう」
なんでもアヤちゃんは、天河に行って人生が変ったと公言する天河通で、弁財天の宮司さまともご呪懇の間柄とのこと。
アヤちゃんのガイドで私は昨年の節分に、生まれて初めて天河弁財天にお参りした。そこはまことに山深く美しい隠れ里であった。
短い滞在であったにもかかわらず、私は天河弁財天で鎌田東二さん、京都の陶芸家の近藤高弘さんとご縁を結び、子供の頃から大ファンだったあの『ガラスの仮面』の美内すずえ先生と露天風呂を共にするという、夢のような機会に恵まれた。やっばり、樽通り、天河弁財天って凄い。
天河が有するその人脈がスゴイ。
さて、天河弁財天は、いわゆる神杜である。

(本文P.8,9より 引用)

 
 


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