悪口の技術
著者
ビートたけし/著
出版社
新潮社
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2003/01
ISBN 4-10-381214-1
磨け!男の罵詈雑言。ライバルに、正しく『バカ』と言い返す術教えます!

外交で、会社で、家の中で……、俺たちどこへ行っても、文句言われっぱなし。これ以上、黙っていられるか――。恋愛から戦争まで、ライバルには正しく「バカ」と言い返し、人間関係に強くなろう!

日本人、みんな良く黙っているよな。
対アメリカ、中国、北朝鮮、全部向こうが言いたい放題、ずっと悪口の言われっぱなしじゃないか。
身の回りを見たって、外務省、銀行、道路公団、おいらたちがこれまで何も言わなかったのをいいことに、やりたい放題好き放題で来て、今や外交、経済、全部めちゃめちゃ。
一昔前、「男は黙って……」なんてのが人気で、寡黙とかクールが持てはやされたけど、もうとっくにそんな時代じゃないってことに、みんなもう気が付いているだろう。
「雄弁は銀、沈黙は金」なんてことわざもあったけれど、信じてたのは、たぶん日本人だけだよ。
口下手は、もうダメ!
もっと「悪口の技術」を磨かないと、世界はおろか、自分の家の中だって居場所がなくなるよ。
みんなそもそも、喋ることは悪いことだと勘違いしているんじゃないかな。
「あいつは口から先に生まれてきた」なんて、悪口もあったりしてさ。
そうじゃないんだ。
お上に任せておけば良きに計らってくれる楽しい時代はもう終わっちゃったんだから、世の中生き抜いていくためには、みんな自分なりの考えを持って回りに伝えていかないと、相変わらず誰か一部のずるい連中にやられちゃうだけ。
現に、日本はこんな出鱈目になっちゃったのに、本当に責任取るべき奴らは頬被りしたままじゃないか。
こんな状況で、まだ黙っててどうする。
世界に対してだってそう。自分に考えがあったら、まずそれを大きな声で叫んでいかなきゃいけないんだね。
意見を、周りの人に実行させたいなら、「僕は皆さんを信頼してます……」なんてセリフは愚の骨頂で、相手にギャフンと言わせなきゃ、しようがないんだよ。
そのために必要なのが「悪口の技術」なんだ。
外国人はそのあたり、本当によく勉強しているよ。
どういう悪口を言えば、相手はどう動くかって研究し尽くしてる。
昔のアメリカのレーガン大統領は、ソ連のことを「悪の帝国」だなんだと悪口を延々言い続け、ついには何の手も下さずソ連を崩壊させちゃった。
今のブッシュ大統領も、誰の入れ知恵か、イラクや北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んで、いつの問にか譲歩を引き出そうとしているじゃないか。
その問、日本は「北朝鮮を信頼して」みたいなことを念仏のようにずっと唱えていて、拉致問題のことも全然持ち出さず、相手に敬語まで使ってたけれど、状況は何一つ好転しなかった。
外交だけじゃない。経済の交渉事でも、女を口説くんでも、どれだけうまく悪口を言えるか、すべてはそこにかかっている。

(本文P.6〜7より引用)

 

 
 


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