バースデイ・ストーリーズ
著者
村上 春樹 編訳
出版社
中央公論新社
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2002/12
ISBN 4-12-003341-4
あなたのお気に入りのバースディを見つけてください

奇妙な話、せつない話、心がほんのり暖かくなる話  
村上春樹が選んだ誕生日をめぐる 11の物語
 書き下ろし最新作 『バースディ・ガール』収録

訳者あとがき

誕生日をテーマにした短篇小説を集めてアンソロジーを編纂し、翻訳もついでに自分の手で全部やろうと思い立ったそもそもの動機はとても単純なもので、それは誕生日をテーマにした優れた作品をふたつ立て続けに読んだからだ。
ひとつはウイリアム・トレヴァーの『ティモシーの誕生日』であり、もうひとつはラッセル・バンクスの『ムーア人』である。
どちらの作品にも読後、思わずうならされてしまった。
それで僕はこう思ってしまったのだ。
「ここに誕生日について書かれたふたつの見事な短篇小説がある。このぶんでいけば、アンソロジー一冊ぶんくらいあっという間にみつけられそうじゃないか!」と。
それもできれば、本棚の奥から引っぱり出されてきたような古典じゃなくて、この十年くらいのあいだに発表された、活きのいいコンテンポラリーなものに限りたい。
それから、手元にあるいろんな短篇小説集をひっくりかえして読み直し、まだ読んでいない短篇小説集やら「ベスト・フイクションズ」みたいなものを漁り、ひたすら誕生日ものを探しまくるという日々が始まったわけだが、作業は思うようには運ばなかった。
誕生日を題材にした短篇小説というのは、一見たくさんありそうに見えて、意外に少ないものなのだという事実を前にして、僕は驚き、途方に暮れてしまうことになった。
いったいどうしてなのだろう?
誕生日というのはそもそも文学のテーマになりにくいものなのだろうか?
それともこの僕が直面している苦境は、テーマとは無関係に、あらゆるアンソロジー編者に等しく降りかかる「アンソロジーの呪い」のようなものなのだろうか?

(本文 訳者あとがき より引用)

 

 
 


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