海辺のカフカ 下
著者

村上春樹

出版社
新潮社
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2002/09/10
ISBN4-10-353414-1
十五歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。

誕生日の夜、少年はひとり夜行バスに乗り、家を出た。生き延びること、それが彼のただひとつの目的だった。一方、ネコ探しの名人であるナカタ老人も、何かに引き寄せられるように西に向かう。暴力と喪失の影の谷を抜け、世界と世界が結びあわされるはずの場所を求めて――。村上春樹待望の書き下ろし長編小説。

 

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データ4
図書館

古い図書館の書架には秘密が満ちている。夜の風がはなみずきの枝を揺らせるとき、いくつかの想いは静かにかたちをとり始める。

データ5
四国

県を越えて陸路で四国を移動するとき、人々は深い森と山を越えることになる。
いちど道を見失うと、戻るのは困難だ。

 

第24章

神戸を出発したバスが徳島駅前に停まったとき、時刻は既に夜の8時をまわっていた。
「さて、ここはもう四国だよ、ナカタさん」
「はい。とても立派な橋でありました。ナカタはあんなに大きな橋を見たのは初めてであります」とナカタさんは言った。

二人はバスを降り、駅のベンチに座って、しばらく何をするともなくあたりの風景を眺めていた。
「それで、これからどこに行って何をするか、お告げみたいなのはあったのかい?」と青年は尋ねた。
「いいえ。ナカタには相変わらず皆目わかりません」
「それは困ったね」
ナカタさんは何かを考えるように手のひらで長いあいだ頭をさすっていた。
「ホシノさん」と彼は言った。

(本文P.3より引用)

 

 
 

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