人生百年 私の工夫
著者

日野原重明

出版社
幻冬舎
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2002/07/05
ISBN4-344-00203-2
90歳現役医師『生き方上手』が贈る、しあわせの処方箋。

60歳からは新しい人生が始まる。仕事や子育てに忙殺される人生は終わり、自分の生き方を選べる自由を初めて得られる。長年、医療の現場で得てきた智恵が満載の、生き方上手へのヒント集。

はじめに

織田信長も謡ったように、古来、日本人にとっては「人生五十年」でした。
しかし、戦後豊かな社会の到来とともに、過去半世紀の間に日本人の平均寿命は、三十年以上も延長しました。
今や「人生八十年」といわれ、いつしかわが国は、世界一の長寿国になっていたのです。
この傾向は、今後さらに続くと思われます。
少しあたりを見まわしてみても、八十歳・九十歳ですこぶる元気というお年寄りは何人もおられます(ちなみに私は、七十五歳からを新老人、八十五歳からを真老人と呼んでいます)。
私自身も、もうすぐ九十一歳の誕生日を迎えますが、現役の医師として、まだまだ働き続けるでしょう。
九十歳を超えたけれども、まだやったことよりもやらないことのほうがたくさんある、そんな気持ちで日々新たです。
日本で今、百歳以上の長寿の方は一万四千人おられます。
もう遠からず、二倍三倍になるでしょう。
アメリカでは五万人を超えました。
二十一世紀はいよいよ「人生百年」の時代を迎えるのでしょう。
しかし、喜んでばかりもいられません。
「人生百年」時代にふさわしい、長い時間を充実して過ごす知恵「人生百年の計」が必要になってくるのではないでしょうか。
以前私は『六十歳の新人宣言』(ごま書房)という本を書きました。
そのコンセプトは「六十歳は老人ではない。いやあなたの本当の人生が始まる再スタートの時だ」というものでした。
今また「人生百年」のものさしから考えると、私が訴えたいことがますます現実味を帯びてきています。
六十年は、「人生百年」のハーフタイムにすぎません。
このたび「人生百年」の視点から、旧著に大幅に手を加え、再編集して世に問うことといたしました。
その意味で、本書のキーワードは「60」と「100」という二つの数字です。
あなたの人生の大きな目安となる数字です。
たしかに、満六十歳で還暦を迎えた老人を床の間に据える習慣は、日本でははるか昔からありました。
それがそのまま続き、六十歳というとまだまだ働ける男女にも定年の判が押され、現役時代の幕が閉じられるというのが今の世のならいです。
さて、この本の読者の中で、「過ぎ去った現役時代は幸せに生きられた」と回顧できる方はどのくらいおられるでしょうか。
みなさんの多くは、前半の人生を夢中に暮らしてこられた方々だろうと思います。
それがやっと現役の重荷を解かれたので、これから先六十歳からの生活は少しゆったりと暮らしたいな、と思われる方は少なからずおられるでしょう。
しかしけっして六十歳で現役の人生が終わるのではなく、この年齢を超えた後半の人生こそは、あなた方が自由にデザインできる希望のある人生であることに気づいていただきたいのです。
私は、みなさんの体の中には、機会がなかったためにせっかくのよい遺伝子も陽の目を見ずにそのまま潜在しているのではないかと思います。
そこで私は六十歳こそは人生のゲームのハーフタイムであることにみんなが気づき、この機会に、第二の人生が幸せに生きられるように、後半の人生に想いをかけてほしいと思います。
自己を開発する後半のあなたの人生の主体は、あなた自身です。
あなたが勇気と希望を持って生きられる第二の人生の旅路は、成熟への上り坂であることを期待してほしいのです。
人生再出発の時・六十歳をもう超えられた方、遠からずこの年がくることを意識されている中年の年代の方々に、私は本書をぜひ参考にしていただきたいと思い、一生懸命書きました。
あなたの人生をあなたがデザインできるということは、何と素晴らしいことではありませんか。
その想いこそは、あなたを幸せに若返らせるものと信じます。
思えば私は五十九歳のとき、日本で初めてのハイジヤック「よど号」の機内に四日間拘禁されました。
その四日めの解放の日を区切りに、私には本当の第二の人生が与えられたことをこよなく感謝しました。
そして、私が私をプロデュースすることができる第二の人生を、勇気を持ってデザインしようと決心したのでした。
私の場合、内なる自分を開発する喜びの中に、その後半も過ぎ去り、今や、みなさんからいえば満九十歳という第三の人生に突入した感がします。
みなさんが幸せに生きられるヒント、私が六十歳を過ぎてからの三十年の間工夫してきたあれこれを、みなさんにお渡しできればと希い、この書の中に私の新しいメッセージを贈ります。
平成十四年六月
日野原重明
(本書 はじめにより引用)

 
 

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