生き方上手
著者
日野原重明
出版社
ユーリーグ
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2001/12/20
ISBN4−946491−26−0
いきいきと生きる。

■目次
1 何事もとらえかた次第;2 長生きはするもの;3 寄り添って生きる;4 いきいきと生きる;5 治す医療から癒す医療へ;6 死は終わりではない

■要旨
90歳を越えた医師からあなたへの贈りもの。
話題の雑誌「いきいき」で大好評連載中!


「人間はひよわな存在です。だから寄り添って生きることができます。」
「習慣に早くから配慮した者は、おそらく人生の実りも大きい。」

今日一日を精一杯、激しく生きる
一瞬が連なって一日となり、一年となり、一生となるのです。
きのうと同じように過ごした今日であっても、きのうはきのうの一度きり、
今日も一度きりの今日なのです。これほどかけがえのない今日を、
失敗を恐れて無為に過ごすのは、あまりにもったいないではありませんか。
 宇宙に向かって飛び立つロケットが、
機体を切り離すたびに軌道を変えるように、
人生の節目ごとに発想を変えて新しいことを始めてはどうでしょう。
すでに私の人生にも幾段もの節ができました。
聖路加国際病院の再開発にあたって、
常識をくつがえす1200億円もの壮大な計画を立てた10年前も、
思えば、ひとつの転換点でした。
無謀なチャレンジとの声もありましたが、いま、手にしている成果は
十分に大きいものがあります。
 仕事の分野ばかりにとらわれることもありません。
定年が間近、あるいは子育ても一段落とい、つのなら、
見知らぬ世界に飛び込むには、まさに好機です。
この先の時間は自分のためにたっぶりと使、ろます。
5年後10年後に思わぬ才能がひとつと言わず花開くかもしれません。
そんな期待に心踊らせながら、今日一日を精一杯、
激しく生きようではありませんか。

 


私のねがい

人生の中年とは50歳から始まるということを、アン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈物』の文章の一節にふれたとき、あるいは医師として患者さんと対話をするなかにその人生を垣間見たとき、なるほどそういうものであるなという思いを私は長らく抱いてきました。
そんな折、『いきいき』という耳慣れない雑誌から連載の話がありました。
読者の方の多くが50代だということが、ただ一つ私が興味をそそられたところでした。
その連載がもう間
もなく2年になろうとしています。
連載はいまも続けていますが、この木は、『いきいき』での私の連載を整理し、手を加えてできた一冊です。
連載を始めてすぐに、読者の方から私のところへ手紙が届くようになりました。
なかには、私が譜ったことばをそっくり書き写して、そこに長い感想を添えてくださる方まであります。
私の投げたことばが、私でさえ気づかなかった深みを与えられて、ふたたび私に返ってくるのです。
そんなよい読者との出会いによって、私の連載は、もはや私だけが一方的に発することばではなく、私と「50代を生きるあなた」との上質な対話にいつしか変わっていったように思います。
50代を私は人生の最大の節目だと思っています。
子どものためでもなく、会社のためでもない、自分自身のための人生がここから始まるからです。
これまでの人生で演じてきた社会的な役割や肩書から解放されたとき、あなたはいったい誰なのでしょう、またどんな人間でありえるのでしょうか。
冒頭のアン・モロウ・リンドバーグは、チャールズ・リンドバーグの妻であり、アメリカ初の女性飛行機パイロットであり、作家・詩人であった人です。
痛ましいことに2歳に満たない長男を誘扮され亡くしましたが、その後5人の子どもを育てました。
そのアンが50歳の手前で、本当の自分をさがすために数週間家族から離れ海辺の小屋で過ごし思索した記録が『海からの贈物』です。
50代のうちに、本当の自分に出会っておくことがその後に続く人生の豊かさを左右します。
そのような思いで語ってきた私のことばが、この本を介して、また多くの人に届き、そこで対話が深まることを願ってやみません。
私のことばはあなたのことばでもあり、また私の問いはすでにあなたの答えの糸口となっているかもしれません。
この本の新しい読者であるあなたが、私の話のなかに「ここにもあそこにも私がいる」と、あなたがいままで知らなかった自分と出会えるきっかけを見つけてくださることを心から願っています。

日野原重明

本文P.6,7より引用

 

 

 

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