光のあふれる屋久島
 
  田口ランディの運命を変えた屋久島。 美しい自然や不思議な出会いよって運命が激変した。魂の物語に誘う旅エッセイ!  
著者
田口ランディ
出版社
幻冬舎文庫/幻冬舎
定価
本体価格 533円+税
第一刷発行
2001/08/25
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ISBN4−344−40145−X

魂の物語の島

「モスラの島みたい・・・・」
思わず私は咳いた。
鹿児島から洋上を南下すること130キロ、大海原に浮かぶ丸い島の真ん中に、どっかんと九州一高い山が費え立っている。

深い緑の森の中に突き出た岩山の頂きは、雲に覆われて隠れて見えない。
きっとあの山のふもとで、若き日のザ・ピーナッツが「モスラーや、モスラーや」と歌っているに違いない、そんな気分にさせる島、それが「屋久島」だったのだ。
1994年4月18日、私が屋久島と出会った記念すべき日だ。

折りからの強い風で小さな軽飛行機は波間に浮かぶ木の葉みたいに揺れに揺れた。
「強風のため、鹿児島空港に戻ることも考えられます」などとアナウンスが入る。
やだよー。

せっかく島の真上まで来たのに戻るなんて言わないでよね。
祈りが天に通じたのか、飛行機は風に翻弄されながらも、どうにかこうにか屋久島空港に着陸した。
タラップに出たとたんにむわっと迫る熱気。

むせるような植物の匂い。
まだ肌寒かった東京とは違い、そこはまぎれもなく南国だった。
朝9時に羽田発の飛行機に乗ったら、午後1時には屋久島空港に降り立っていた。

屋久島は地の果ての秘境かと思っていたので、そのあまりの近さに拍子抜けする。
手荷物を受け取って、空港ロビーに出ると、痩せた眼鏡の男性が、すばやく私を見つけて寄ってきた。
「田口さん?(ですよね)」

「あ、そうですけど・・・、YNACの方ですか?」
彼はこくんとうなずいた。この人が後に私の"海の師匠"となる、エム氏であった。
エム氏は「屋久島野外活動総合センター(YNAC)」の社長である。

私はこのYNACが主催する「屋久島エコパック」なるエコツアーに参加するために屋久島を訪れたのだ。
いま思うとYNACとの出会いが私を変えた。
YNACの面々と知り合わなければ、私はきっと「観光コースしか行かない観光客」になってたと思う。

そしてたぶん「な-んだ、屋久島ってあんがいつまんないところ」とか言って、二度と訪れることはなかったと思う。
現に私のライター仲間はこう言った。
「アタシさあ、ずっと前に温泉めぐりの取材で行ったけどさ、屋久島って、縄文杉以外なーんにもないつまんない島だったよ」確かに屋久島には気のきいたものはなにもない。

海と森と川以外には・・・・。
YNACは民間企業である。
名前は大仰だけど島の行政とは一切関係ない。

メンバーは当時はエム氏を含めて3人だった。
この3人のガイドが屋久島の海、山、川をガイドしてくれる。
彼らにとって私は、毎年たくさんやってくる観光客の一人にすぎなかったろう。

でも、私にとっては運命の出会いだった。
私は勝手に彼らに弟子入りすることを決意し、以来、毎年のように屋久島を訪れてはYNACに入りびたった。
一方的な片思いってヤツである。

片思いも貫き通せば実を結ぶものだ。
こうして私は屋久島の本を執筆することになった。
もっとも、空港でエム氏と出会ったときは、まさかこれほど屋久島を好きになるなど思ってもいなかった。

 

 

 

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