小説 小泉純一郎 信を貫いて恐れず
 
  旧い日本喧嘩を売った男 初の徹底取材!感動の政治革命ドキュメント 「変人」宰相の真実  
著者
木下英治
出版社
幻冬舎
定価
本体価格 1800円+税
第一刷発行
2001/07/20
ISBN4−344−00097−8

構造改革なくして、景気回復なし

平成十三年四月十二日、麻生太郎、橋本龍太郎、亀井静香、小泉純一郎の四人が自民党総裁選の立候補の届け出をおこなった。
それぞれの候補は、選対用に党本部五階の一部屋ずつを分け与えられた。
小泉選対は、五〇八号室だったが、いつも人がいるのは小泉選対だけ。

ほかの三陣営は、赤坂プリンスホテルやキャピトル東急ホテルに部屋を借りて拠点にしていたからである。
小泉陣営は、小泉が金をかけないので選対本部は五〇八口万室だけであった。
小泉は、金に無頓着なのか、軍資金をまったく出さなかった。

それゆえ、小泉選対の議員は、それぞれ白腹を切り、パンフレットの郵送費や電話作戦の電話代金にあてた。
十二日、自民党総裁選の候補者による共同記者会見がおこなわれた。
小泉は、記者の質問に答えた。

─立候補の決意は。
「今回ほど『自民党、このままでいいのか』という意識を持つ時代はなかった。自民党とH本を変える決意で立候補した。自民党は最も拒否され、反発される政党になった。自民党が、国民全体の利益を最優先しているのかどうかを国民は見ている」

─景気対策優先ですか、財政構造改革ですか。
「構造改革なくして景気回復はない。
財政健全化のために何をするかを示すことで、経済に自信が持てる。

改革のため断固とした姿勢を見せて初めて政治に信頼が企まれる。もっともやらなければならないのは『精神構造改革』だ。
今は我慢して明日をよくしようという精神なくして景気回復はない」消費税減税には賛成ですか。
「消費税の引き下げは反対だ」自民党改革をどう進めますか。

派閥解消についてどう考えますか。
「一人一人が自分の判断で投票できるかどうかが、党の体質改善に役立つ。そういう総裁選にしなければならない。派閥はいい面もあるが、弊害が目立つ。派閥あって党なしという状況を変えなければならない。総理になったら、一年ごとの派閥順送りの閣僚選考はしない」自民、公明、保守三党の枠組みをどう評価しますか。

参院選後も枠組みを維持する考えですか。
「新しい時代にどういう政策がふさわしく、何が必要かを国民本位に考え、実現する体制を取る。公明党、保守党と協力することも大事だが、これ以外の政党の協力を求めないという態度は取らない」
特定の、歴史教科書に対して中国、韓国が反発しています。

「日本の検定制度と、中国や韓国の検定制度は違う。日本の検定制度に合格した教科書に対して中国や韓国が批判するのは自由だが、日本はそれに惑わされることはない」与党内には、衆院を中選挙区に見直すべきだという声があります。
「小選挙区比例代表並立制には反対した。有権者が落選と審判を下したのに、政党幹部が比例名簿の上位に登載していると当選するからだ。が、選挙制度改革でエネルギーがあるなら、いっしょに首相公選制を提唱したい。首相を選ぶ権限を国民に手渡す、政治の規制緩和だ」小泉は、選挙戦で連立の枠組み論について触れた。

「自公保体制が先にありきではない。改革をいっしょにやるなら、すべての政党を誘いますよ」小泉に「先生が立ち上がれば、与野党をふくめて、その旗のもとに集まる議員はいますよ」とけしかけた民主党三回生の松沢成文はこの記者会見での連立の枠組み論を聞去さおもった。

〈おれがいったことが、少しは影響しているのかな〉小泉は、今回の総裁選に出馬を決めた当初、勝算はもっていなかったと筑紫哲也はおもう。負けたときには、おそらく自民党を割る気だったのではないか。
総裁選告示日の四月十一日夜、小泉と亀井が筑紫がキャスターをつとめるTBSの報道番組「NEWS23」に出演した。本番終了後、亀井はさっさと帰った。
小泉は、テレビ局に残った。

筑紫は、小泉とワインを飲みながら控室で談笑した。筑紫は訊いた。
「どのような結果になるとおもう」小泉は、確信をもっていった。
「橋本さんが勝つ。勝った後で、自民党は地獄を見るんだ」自民党は、橋本を総裁に選ぶだろう。大変な地獄を見たあと、自分にチャンスがめぐってくると読んでいるようであった。小泉は、百四十一票の予備選の目標数を、過半数ぎりぎりの七十一票に設定していた。

七十票を告示でも超えれば、「党員は、自分を支持してくれた。永田町は、どうする」とヒ首を突きつけるつもりであったのだろう。
四月十三日金曜日、小泉の街頭演説が有楽町マリオン前でおこなわれた。
西に向かうキャラバン隊の出発地点であった。その数、なんと三千人であった。
小泉も、おどろいていた。

 

 

 

 

 

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