日のあたる白い壁
 
  偶然で必然の、絵画との私的な出会い─江國香織 ゴーギャン・セザンヌ・ゴッホ とびきりの絵画24人の作品を愛する理由を人気作家がつっづた、初めての美術エッセイ&画集  
著者
江國香織
出版社
白泉社
定価
本体価格 1680円+税
第一刷発行
2001/07/23
ご注文
ISBN4−592−73184−0

まえがき

美術館にいくのが好きです。

美術館の、白さとあかるさと無音さが好き。

書物も絵画も、あるいは映画も「物語」として認識されているのに、美術館がされていないのはおかしなことです。

しかも、書物や絵画や映画は物体としては平面ですが、美術館は立体で、現実に体ごとすっぽり入りこんでしまえる別世界です。

誰をもアリスにする場所だと思う。

いろんな国のいろんな街で、美術館にいきました。

そこで出会った絵について書くことは、でも勿論私について書くことでした。

一枚の絵の、線の力や色彩の力を伝えようとすることは、でも勿論文章の力を伝えようとすることでした。

もし私に美しい絵をかく力があったら、この本がかかれることはなかったと思います。

様々な時代に様々な場所にいた、そしていたさまを見せてくれている、美しい画家たちに嫉妬しつつ憧れつつかきました。

オレンジで始まって桃で終る、私的なラインナップの一冊になったことが嬉しいです。

書くことも読むことも絵をみることも(そしておそらく絵をかくことも)、すこし旅に似ています。

かく人と読む人とみる人が、旅先でばったり会うことも、たぶんときどきあるでしょう。

二〇〇一年六月

江國香織

 

 

 

 

このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.