|
★ 編集長 清水満郎さんに聞く
日本美術の神髄といえるのが国宝。京都や奈良の古寺を訪れ、日本の美を堪能したいと思っている人も多いはずだ。講談社から刊行される「国宝の旅」は、日本の国宝1059点を完全網羅。四季折々の美しい写真をふんだんに、国宝を訪ねる旅へいざなってくれる魅力ある1冊だ。講談社総合編纂局局次長・清水満郎さんにお話いただいた。
─ 今回は国宝がテーマの1冊本ですね。
「総合編纂局では、美術書、歴史書などを数多く作ってきていますが、日本の国宝は、日本美術のなかでもやはり特別なものです。日本文化の最高峰であり、今、日本人が失いつつある日本の美、日本の心といったものを具現化したものです。そして、いつの時代も多くの人の心をひきつけてやまないもの、それが日本の国宝なんです。実際、国宝の展覧会には、非常に多くの人が集まります。最近では、国宝醍醐寺展や、国宝唐招提寺展、国宝源氏物語絵巻展などが開かれましたが、いずれも大盛況でした。また10年ほど前には、東京国立博物館で、日本の国宝展が開かれましたが、ものすごい人気で、その入場者数は、モナリザ展、ツタンカーメン展に次いで歴代3位のレコードを記録しています。それほど国宝は、幅広い人気があり、国宝という言葉自体にも吸引力があります。今回は、そんな日本美術の神髄でもある国宝を、旅というテーマにのせてお届けしょうとするものです」
─ 旅という切り口にしたのは、なぜでしょうか。
「国宝だけでも多くの人の心をつかむと思いますが、さらに幅広い層の方々に国宝の魅力を伝えていきたいと考えました。それには、単に国宝の美術・学術的な解説だけでなく、旅という要素も重要ではないかと。学生時代に京都や奈良の古寺を訪ね歩いたことのある人も多いと思います。もう一度ゆっくりと訪れてみたいと思っている方もいらっしゃると思います。そんな方々に向けてより個性のある旅、目的のある旅を楽しむためのガイド的要素も取り入れながら、国宝をわかりやすく紹介していきたいと考えたわけです」
─ では、その内容について教えてください。
「掲載している国宝は、1059件、すべて網羅しています。建築209件、絵画155件、彫刻123件、工芸252件、書跡280件、考古等40件を収録しています。今年新しく指定を受けた国宝3件についても、新指定のページを作って、そこで紹介しています。さらにだれもが1度は目にしたことのある、いわば国宝中の国宝20点については、1見開きを使って、詳しくわかりやすく解説しています。たとえば、阿修羅像で有名な興福寺の八部衆立像や、神護寺の伝源頼朝像、厳島神社にある平家納経、姫路城などですが、それらを読み解く知識や、作品にまつわるドラマやエピソード、時代背景までもくわしく紹介しています。このように日本の国宝を図版とともにすべて1冊にまとめたものは、これがはじめてになります」
─ 全体の構成としては、地域別に分けての編成ですね。
「巻頭から京都、奈良、東京の順に、所蔵の多い地域を紹介して、それ以降は、北から南まで地域別に構成しています。これまでは、建築、絵画、彫刻というようにジャンル別に収録するのが通常でしたが、この本は、旅にこだわっていますから、地域別や所蔵先別に紹介することにしました。国宝の多いところは、やはり圧倒的に京都と奈良で、この2つで半分近くを占めています。京都は、東山区から、だいたい区ごとに分けています」
─ 日本の国宝がこんなにたくさんあったのかと、改めて驚かされますね。
「私自身も大変ビックリしました。あの国宝はここにあったのか、ここのお寺にはこんな国宝が眠っていたのかと。読者の方にもそんな新しい発見があると思います。京都や奈良だけでなく、家の近くのお寺や神社にも国宝が所蔵されているかもしれません。個人的にも、いつかこの本の国宝、1つ1つをゆっくりと見て回りたいと思っています」
─ 国宝1点1点もすばらしいですが、風景写真が大変きれいで、旅心をくすぐりますね。
「お寺や神社の外観写真などからは、日本の四季折々を感じられると思います。桜が満開の姫路城や、カエデが色づいた六波羅蜜寺、紅葉の寂光院、ほかにも、その季節ならではの美しい写真をふんだんに掲載しています」
─ 実際に国宝を見に行く場合の実用情報も充実しているそうですね。
「所蔵先へ行くときのアクセス方法や拝観時間、拝観料、休日などの情報を詳しく載せています。国宝の中には、ある決まったときにしか拝観できないものも多くあります。たとえばMOA美術館が所蔵している尾形光琳の『紅白梅図』は毎年2月のみの公開ですし、法隆寺夢殿の救世観音もご開帳の時しか見ることができません。せっかく行ったのに見られなかったということのないように、秘宝や秘仏の拝観可能な日時も紹介しています。さらに周辺のグルメやお土産についての情報は、ページの両サイドで紹介し、地域の名勝などについても紹介しています。索引では、京都のどこそこ寺にはどんな国宝が所蔵されているのかがわかるような、所蔵別リストもつけています」
─ 地域ごとに時刻表の路線図(下図参照)が載っているのは、ひとつのアイディアですね。
「各地域の最初のページには、弘済出版社のご協力を得て、時刻表とまったく同じ線路地図を載せました。それに、紹介している国宝のあるお寺などの写真も組み合わせて、どこの駅に何があるのかをわかりやすくしました。アクセス方法を載せても、地名だけですと、どこにあるのかわからない場合も多い。でも電車の路線図があれば地理的にイメージしやすいですし、旅の計画も立てやすいと思います。また、京都や奈良、東京についても詳しい市街図を載せて、国宝の所蔵先をマッピングしています」
─ 人気のある観光地情報も随所に載っていて楽しいですね。
「京都の大原、九州の由布院など、人気の高いスポットは、簡単な散策地図なども入れながら紹介しています。ですから、これ1冊で国宝を訪ねる旅のガイドブックとしても十分役に立つと思います。国宝については、一般のガイドブックでは物足りない場合も多いですから、国宝の解説プラス旅の実用情報も満載しているこの本はいろいろと活用できると思います」
─ 読者対象はどういつだ方々をお考えでしょうか。
「やはり中高年の方々が中心になると思います。日本美術の好きな方や、旅行好きな方、歴史好きの方をはじめ、この秋に京都や奈良を訪れる計画を立てている方など、幅広い方々に読んでいただきたいですね」
─ 価格的にも大変お得だと思いますが。
「国宝をあつかった本というのは、どうしても高価なものになりがちです。国宝の写真を掲載するときには、使用許可料などもかかり、コストが高くなってしまいます。ですが、今回は、国宝を旅という切り口で切ることによって、さらに広がりを持たせたい、より多くの方にお届けしたいという思いで、お求めやすい価格に設定しました。表紙もソフトカバーにして、親しみやすく読みやすい装丁にしました。国宝の本といいますと、硬くてとっつきにくいイメージを持つ方も多いと思いますので、できるだけ親しみが持てるように工夫しています」一文章もわかりやすいですね。「国宝の解説は、専門の先生方に執筆していただきますとむずかしい専門用語が多く、一般の方にはわかりにくいことが多いんです。今回は、ライターが書いたものを先生方にチェックしていただきながら文章をつくりましたので、よりわかりやすくなっています」
─ ただ読むだけでも、とても楽しめる1冊ですね。
「自分の興味あるところがら読みはじめてもいいですし、パッと開いたところを読んでも楽しめます。居ながらにして国宝のすばらしさを堪能できると同時に、いっかはこの国宝を見に行きたいと、夢をかきたてられることも多いと思います。より多くのお客様に手にとっていただいて、中をご覧いただければと思います。よろしくご協力をおねがいいたします」
─刊行を楽しみにしています。
|