ザ ゴール  企業の究極の目的とは何か
 
  全米で250万部 突破! 読み進むうちに、TOCの原理が頭に入る!  
著者
エリヤフ・ゴールドラット
出版社
ダイヤモンド社
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2001/5/17
ISBN4−478−42040−8

T 突然の閉鎖通告

朝七時半、会社のゲートをクルマでくぐると、駐車場奥の真っ赤なベンツが目に飛び込んできた。
工場棟に隣接した事務所脇に停めてある。
それも私専用の駐車スペースにだ。

こんなことをするのはビル・ピーチ以外にいない。
朝のこの早い時間帯、駐車場はまだほとんど空だし「来客者用」と表示されたスペースもあるのに、そんなことはおかまいなしのようだ。
いや、私のスペースにわざわざ駐車することに意味があるのだろう。

ビルは言いたいことがあるとき、こんなわざとらしいことをする。
彼は副本部長、私はこの工場の所長にすぎない。
彼のほうが偉いのだから、自分のベンツをどこへ駐車しようと勝手だということらしい。

私は自分のクルマをベンツの隣の「経理課長」と書かれたスペースに停めた。
クルマを降りてベンツの脇をすり抜けながら、ちらっとナンバープレートに目をやった。
「NUMBER 1(ナンバーワン)」ビルのクルマに違いない。

彼にお似合いの番号だ。
いつも一番になることしか考えていない。
いずれは社長の座を狙っているのだろう。

私だって願望こそあれ、そんなことはいまのところ望めそうにない。
私は事務所の入り口に向かった。
すでに体内ではアドレナリンが沸き立っている。

いったい、ビルは何をしに来たのだ。
午前中は、どうやら自分の仕事はできそうにない。
昼間は忙しいので、朝早めに出勤し、自分の仕事を片づけるようにしている。

電話が鳴り出したり、会議が始まる前ならなんとか仕事がはかどる。
朝、最初の休憩時間までが勝負だ。
しかし、今日はそうもいきそうにない。

「所長!」
誰かが私の名前を呼んだ。
足を止めると、工場棟横の扉から男が四人飛び出してきた。
シフト・スーパーバイザーのデンプシー、組合委員のマルチネス、機械主任のレイ、それに時間給の機械工だ。

名前は知らない。
私のところに走り寄るなり、みんな一斉に話しかけてきた。
デンプシーは大変な問題が起きたと言い、マルチネスはストライキだとわめいている。

時間給の男は、ハラスメントがどうとかこうとか騒ぎ立て、レイは部品が全部揃っていなくて作れないと言っている。
突然の喧騒に巻き込まれ、私は彼らの顔をただ見ているだけだった。出勤して、まだコーヒー一杯すら口にしていない。
ようやくみんなが落ち着いたところで、いったい何の騒動か訊ねた。

ビルが一時間ほど前、41427番のオーダーの状況を教えろと工場に乗り込んで来たというのだ。
しかし、41427番のことがすぐわかる者など一人もいなかった。
そこでビルは、工場中の人間を片っぱしからつかまえては訊きまくっていたというのだ。

結局、かなり大きなオーダーで納期に遅れていることがわかった。
しかし、だからいったいどうしたというのだ。
この工場で納期に遅れることなど当たり前のことではないか。

この工場では重要度順に客からのオーダーを四つに分けることができる。
「Hot(重要)」、「Very Hot(最重要)」、「Red Hot(超最重要)」、「Do It Now(いますぐやれ)」の四つだ。
つまるところ、すべてが遅れているのだ。

41427番が出荷にはまだほど遠いとわかると、ビルは自ら問題の処理にあたり出した。
烈火のごとくわめき散らし、デンプシーにいますぐやれと怒鳴りっけたのだ。
しばらくして、必要な部品はほとんどすべて揃っていることがわかった。

それも大量にだ。
しかし組み立てることができない。サブ・アセンブリーの部品が一つ足りないのだ。
それに、まだ通さないといけない工程も残っている。

その部品がなければ組み立てることはできない。
組み立てることができなければ当然、出荷もできないのだ。
結局、このサブ・アセンブリーの部品はNC工作機械の脇で見つかった。
NC工作機械は運転開始を待つばかりだったが、セットアップされていたのはこの問題の部品の組立てではなく、別の「Do It Now」の仕事だった。

ビルは、ほかの仕事などに関心はなかった。
41427番を出荷することだけで頭がいっぱいだった。
ほかは後回しにして、41427番に必要な部品を組み立てろ─そう、機械工に指示を出せとデンプシーに命じたのだ。

指示を受けた機械工はレイやデンプシー、そしてビルの顔を見回すと、手にしていたレンチを床に投げつけ、みんな正気でないと言い捨てた。
「Do It Now」だと言われて、アシスタントと一時間半かけてセットアップしたばかりだったのに、それを後回しにしてほかのセットアップをしろと言うのか?

いい加減にしてくれ!
こんなとき、ビルはいつも外交官ばりに相手を脅しにかかる。
機械工に歩み寄り、指示どおりしなければクビだと告げたのだ。

少しやり取りがあった後、逆に今度は機械工がストライキだと脅した。
そこで、組合委員も姿を現した。
みんな、気が立っている。

とても仕事ができるような状態ではなかった。
「で、ビルはいまどこに?」
「所長の部屋です」

デンプシーが答えた。
「そうか。すぐに行くと伝えてきてくれ」
そう頼むと、デンプシーは勢いよく所長室に向かった。

私は振り返り、マルチネスと機械工に視線を向けた。
誰かをクビにするとか停職にするなどといった話はない、ただの誤解なのだと伝えた。

 

 

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